みずべちほー

すかいだいびんぐ

ろっじを出て、自分がなんのフレンズなのか知るために、としょかんへと向かい始めた私とキリン。私にとっては、目に見えるありとあらゆることが新発見のように感じられて、とてもおもしろかった。




「さあ、ここの道を抜ければ、すぐすこにとしょかんが見えるわよ!」

キリンが向こう側を指差して言った。色々なことを楽しみながら歩いていたら、あっという間にとしょかんに着きそうになっていたようだ。私は、期待を抑えきれずに、駆け出した。道をどんどん進んでいって、森を抜けるとそこには…


私は、急激な景色の変化に目を奪われた。さっきまで木ばかり生えていたのが、一気に木が減り、その代わりに…

「すごーい!!こんなにたくさん水が!!ここがとしょかんなの!?」

私がそう言うと、後ろの方にいたキリンが驚いたような表情をして走り出した。キリンは、私にようやく追いつくと、

「なん…ですって…どこで迷ったのかしら…?」

と、呟いた。

「迷った?ってことは、ここはとしょかんじゃないの?」

私が聞くと、キリンは申し訳なさそうに、

「え、ええ。としょかんはろっじと同じちほーにあって、としょかんの周りにもたくさん木が生えているのよ。多分、ここは、『みずべちほー』ね…ごめんなさい…」

と、頭を下げて言った。

「全然いいよ!むしろ、こんなにすごいものを見られたんだから、よかったよ!それに、なにかあったほうが冒険っぽくて楽しいじゃない?」

私は、落ち込むキリンに言った。

「そ、そう?喜んでもらえたなら結果オーライね。」

落ち込んでいたキリンは、少し元気を取り戻した。


「いやあ、それにしても…」

唐突に後ろから声が聞こえてきた。

「うわああああああぁぁぁぁぁぁ!!?」

私達は、もうその声を聞いただけでそこに誰がいるのかわかっていた。だけど、後ろから唐突に声がして私達は驚き、大声をあげた。

「ウフフ。わざわざそんなにいい顔を見せてくれなくてもいいのに。まあ、それはそれで嬉しいけど。」

「ご、ゴマバラワシさん、なんでここに!?」

私がさっきの驚きをまだ落ち着かせられていないまま尋ねた。

「あなた達がろっじを出て行ってから、急にあなた達のいい顔が恋しくなってね。こっそりついてきちゃったわ。ウフフ。それに、まだ看病してくれたお礼をしていなかったからね。」

ゴマバラワシさんはクスクス笑いながら答えた。

「それはそうと、あなた達、ろっじを出てすぐに道間違えてたわよね。その時に、としょかんとは正反対の方向に進んでいっちゃったから、みずべちほーに着いちゃったのよ。」

ゴマバラワシさんは続けて言った。それ聞いたキリンは、

「あ、ああ〜…もしかしてあそこかな…あんな早い段階から間違えていたなんて…」

と、また落ち込んでしまった。

「キリン、そんなに気にしないで大丈夫だよ。」

私が慰めるように言うと、キリンはありがとうと、しょぼしょぼした声で言った。

「あらあら、悲しそうな顔は私、あまり好きじゃないわね。そうだわ、看病のお礼として、とっても楽しいことをさせてあげるわ。」

ゴマバラワシさんが提案した。

「とっても楽しいこと?」

私とキリンが声を合わせて聞く。

「そう。とっても楽しいから、私大好きなの。特に、誰かと一緒にするのが好きなのよね。」

ゴマバラワシさんはうっとりしながら答えた。


ゴマバラワシさんが好きなこと…たしか、前にオオカミさんが言っていたような…


「もしかしてそれって、『スカイダイビング』ですか…?」

私が恐る恐る聞くと、

「あら、なんで知ってるのかしら。ウフフ、そうよ、スカイダイビング。あなた達に、この楽しさをぜひ味わってもらいたいのよね。みずべちほーは開けているから、しんりんちほーより着地の時に安全だから、初心者にはピッタリの場所よ。」

と、答えた。予想が的中して、私達は少し身震いした。空から落ちる。そんな怖いこと、できそうもない。

「あら、そんなに怖がらなくてもいいのよ。安心して、私がちゃーんと、見ててあげるから。」

私達の様子を見たゴマバラワシさんが言った。すると、

「ゴマバラワシ。私がスカイダイビングをするわ。ずっと看病してたのは私だし、『お礼』を受けるなら、私が適役だからね。」

キリンが覚悟を決めたのか、そう言いながらゴマバラワシさんに近づいて行った。

「キリン!キリンがするなら、私もするよ!」

私が言うと、

「いいの。『お礼』を受けるのは、私だけで十分よ。それに、色々と申し訳ないからね。もしかしたら、本当に楽しいかもしれない…その希望に、私は賭けるわ。」

キリンは勇ましくそう言った。そして、ウフフと笑ったゴマバラワシさんに抱えられて、キリンは空高く飛んで行った。キリンとゴマバラワシさんの姿が見えなくなると、私はキリンの無事を祈り始めた。




しばらくすると、空高くから何か二つのものが落ちてくるのが見えた。あれは…

「キリンとゴマバラワシさんだ!!」

私は、キリンの無事をより一層強く祈った。キリンとゴマバラワシさんは凄まじい速度で地面に近づいてきていた。あと少しで地面に着くところで、ゴマバラワシさんがキリンの下につき、キリンを背中で支えた。そして、そのままさらに加速して…

ビュン!!

すごい音を立てて進行方向を変えて、地面スレスレを低空飛行した。

「……ぁぁぁぁあああああああ!!!!…」

あまりの速さに、キリンの叫び声が遅れて聞こえてきた。

その後、速度を落とした二人は、私の元へと帰ってきた。フラフラしているキリンを私が支えた。

「はあ…はあ…はあ…こ、怖かった…けど…案外癖になるかも…」

キリンが息を切らしながら言った。私は、その言葉に少し驚いた。スカイダイビング、怖いように思えて、実は本当に楽しいのかもしれない。そう思った。

ゴマバラワシさんの方を見ると、

「ウフ、ウフフ。とってもいい顔を見られたわ。やっぱり、ついてきて正解だったわね。」

すごく満足そうにしていた。

「ゴマバラワシ…怖かったけど、ちょっと楽しかったわ…たまにやってみると楽しいかもしれないわね…」

「私の方はいつでも大歓迎だわ。スカイダイビング愛好家が増えてくれたら、私も嬉しいからね。」

私は、なにか二人の間に奇妙な繋がりが生まれたように思えた。



その時、近くの水場から、一人のフレンズが飛び出してきた。それは、長い槍を持ったフレンズだった。

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