ゆめ

「彼女はアリツカゲラよ。ここのオーナーなの。」

「よろしくお願いします〜。」

アリツカゲラさんは、キリンに紹介されると、丁寧にお辞儀をした。私もそれにつられて、お辞儀をした。

「ところで、こちらのフレンズさんは?」

「この子は、私の新しい友達のシマウマよ!ついこの間の噴火で新しく生まれたフレンズよ!」

アリツカゲラさんに質問されたキリンは、自慢げに答えた。それを聞いたアリツカゲラさんは、私をまじまじと見つめた。

「な、なにかおかしなことでもあったでしょうか…?」

「い、いえ、特にこれといったことではないんですが…一つお聞きしたいのですが、シマウマさんは自分がシマウマのフレンズだということを知っていましたか?」

「??いえ、フレンズになったばかりの何も知らない私に、キリンが色々と教えてくれたんです。さすが、名探偵ですよね!」

私も自慢げにそう答えた。それを聞いたアリツカゲラさんは、

「あちゃー…」

と、おでこに手を当てて、変な顔をしていた。どういうことかはよくはわからなかった。

「そうだ、アリツさん、私たち雨の中を歩いてきてびしょびしょだから、何か体をふけるものないかしら?」

ふと思いたったようにキリンが言った。たしかに、体が濡れていて、ろっじの中がいくら雨を防げているといっても、少し寒い。

「あ!そうですね!すぐ用意しますね!」

アリツカゲラさんは近くの棚の中から白いなにかふわふわしたものを取り出して、私達に差し出した。それで私達は体をふき、またそのふわふわしたものをアリツカゲラさんに返した。アリツカゲラさんは、そのふわふわしたものを壁についていた棒にかけてから、

「それでは、体も綺麗になったところで早速、ろっじありつか自慢のお部屋をご紹介させていただきます!気に入ったお部屋にぜひご宿泊を!!」

と、いきいきとした様子で言った。

「ここはすごくいいところでね、私ももう長い間ここに滞在させてもらってるわね。」

キリンも続けてそう言う。

「ほんと?じゃ、じゃあ、行く当てもないし、私もここに宿泊しようかな。アリツカゲラさん、案内お願いします!」

「喜んで!では、こちらにどうぞ!!」

そう言ったアリツカゲラさんに私と、付き添いでキリンがついていった。



私はろっじの中をたくさん案内してもらった。寝るところがふわふわと浮いている不思議な部屋、洞窟のように暗くてしっとりとした部屋、(今はあいにく雨だけど)晴れているときはみはらしがいいという部屋などなど…どこも素敵な部屋ばかりだった。

「これで当ろっじのお部屋は紹介し終えましたが、お気に入りのお部屋はありましたか?」

アリツカゲラさんが私に問いかけた。

「う〜ん…外の景色が見られると、楽しそうだから、みはらしのいいお部屋がいいですかね。」

「おお!シマウマもその部屋を選ぶとは、いいセンスしてるわね!私もその部屋なのよ。みはらしが本当に綺麗だから、私からもオススメね。」

「ほんと!?やったあ、おそろいだね!!じゃあ、そのお部屋でお願いします!」

「かしこまりました!」

こうして、私の宿泊するお部屋が決まった。アリツカゲラさんの気配りで、キリンの部屋の隣の部屋にしてくれた。


私は、部屋にあったふかふかの「ベッド」というものに寝転がった。森を歩いてきた疲れがどっと取れる気持ちよさだった。

「だいぶお疲れのようね。あっ、そうだ。ちょっと休憩したらさ、ぜひ会ってもらいたいフレンズがいるのよ。来てくれないかしら?」

キリンがそう提案してきた。

「もちろん!色々なフレンズにも会ってみたいしね。」

「わかったわ。私も自分の部屋で休んでるから、行く準備ができたら呼んでね。」

そう言ってキリンは自分の部屋へと戻っていった。


寝転がって天井を見ながら色々なことを私は思った。フレンズのみんなはとても優しいな。フレンズになれてほんとうによかったな。これからのことがとても楽しみだな。そうしているうちに、私は眠りについてしまっていた。





ーーここはどこだろう…


森の中…かな…


私は必死に走っているみたい…


あれ?急にとまっちゃった…


体が痛い気がする…


とても怖いけものの顔が見える…


ああ、私きっとーー





「シマウマ!大丈夫!?だいぶうなされてたみたいだけど、怖い夢でも見てたの!?」

気付くとそこにはキリンがいた。

「あれ…キリン…?なんでここに…?」

「いやあね、私もちょっと寝てたんだけどね、起きても呼ばれた気配もなかったからちょっと様子を見に行ったら、シマウマがうなされてたから…大丈夫?」

なるほど、私のことを心配してくれていたのか。

「ありがとう、キリン。やっぱりキリンは優しいね。うん、なにか変な夢を見ていた気がするんだけど…忘れちゃった。多分、疲れてただけだよ、安心して。」

「そ、そう?それならよかったわ。」

キリンはどうやら安心したようだ。

「寝たら疲れも取れたよ!その私に会ってもらいたいっていうフレンズに会いに行きたい!」

「そうね、じゃあついてきて!」

そう言ったキリンの後を私は追った。



私達は、とある部屋の前に着いた。私達の部屋からそう遠くない部屋だ。キリンはその部屋の入り口の戸をトントンと叩いて、

「先生!!失礼します!!」

と、大きな声で言い、戸を開けて中に入った。私もそれに続くと、中には一人のフレンズが座りながら何かをしていた。

「先生!私の新しい友達、シマウマを連れてきました!!」

「シマウマです、よろしくお願いします。」

私はキリンの言葉に続いた。

「私はタイリクオオカミ。オオカミでいいわ。よろしくね。…ってあなた、本当にシマウマのフレンズなの?」

オオカミさんは紹介と同時に、アリツカゲラさんと同様に、私をまじまじと見つめて怪しがっていた。

「はい、フレンズになったばかりの私に名探偵のキリンが推理によって、私がシマウマだと教えてくれたんです。」

私は怪しがっているオオカミさんにそう返した。すると、オオカミさんもアリツカゲラさんのようにおでこに手を当ててなんとも言えない顔をしていた。その後、オオカミさんは、

「キリン…この子をよく見るんだ。たしかに毛皮の模様はシマシマ模様だ、それに、茶色い毛皮のシマウマもいないことはないだろう。だけど、シマウマにあんなに立派なツノがあると思う…?」

「!?」

私達はその言葉に驚きを隠せなかった。言われて初めて気がついた、私の頭には大きなツノが二本あるようだ。私はキリンの方を見た。

「うぐぅ…わ、私の推理が間違っていたなんて…でも、先生が言うならきっと…」

自分の推理が間違っていたと思い知らされたキリンは床に膝と手をつき、落ち込んでいた。


私はまたしても私がなんなのかわからなくなってしまった。

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