ろっじ

たんじょう

「ーーここは…どこ…?」



私は気付くと、森の中にいた。あまりに突然のことで、なにがなんだかわからない。ここはどこなのか、私は誰なのか、なんでここにいるのか…記憶が全くないのだ。私は怖くなり、どこを目指すというわけでもないが、走り出した。



どれくらい走ったのだろうか、身体に疲れの色が見え始めた頃だった。

「えっ!?」

驚きの声が聞こえたと同時に、私は何かにぶつかった。ぶつかった勢いで私は転倒し、相手はちょっと吹っ飛んでいった。

「うわっ!!ご、ごめんなさいっ!!」

私は慌てて謝罪した。吹っ飛んでいった相手はゆっくりと起き上がった。思いきり怒られたらどうしよう…私は不安でビクビクしていた。

「いたた…もう、走るときは周りに気をつけて走ってよね!」

その相手は、声を大きくして私に注意をした。が、特に怒っている様子ではなかったようだ。そして、その相手はまだ地面に転倒したままの私に手を差し出して、私を起こしてくれた。

「私はアミメキリンよ。キリンでいいわ。名探偵をやっているの。」

キリンさんは自慢げに自己紹介をしてきた。私も何か返そうと必死に返事を考えた。

「よ、よろしくお願いします、キリンさん。えっと、私なんですけど、実はまだ…」

「待って!!名探偵であるこの私には、もう既にあなたがなんのフレンズかお見通しよ!」

なんと、キリンさんは私が誰なのかを知っているらしい。早速、自分の正体を知ることができそうで嬉しくなって、

「え!!本当ですか!?教えてください!!」

と、興奮した口調で言った。

「フッフッフッ、いいわよ。その体の模様、走る習性、この場所、時間…これらの証拠から推理するに、あなたは…」

キリンさんがそう言い、私は唾を飲んだ。



「ーーあなたは…シマウマね!!」



ドーン!!と私に指をさしながら自信満々にキリンさんは言った。

シマウマ!それが私の正体!!私はとても嬉しくなって、

「私は、シマウマのフレンズ?なんですね!ありがとうございます!!」

と、お礼を言った。この言葉に戸惑ったのか、キリンさんは、

「え、ええ?あなた、自分がなんのフレンズなのかわかってないの?…ってことは、もしかしたら、この間の噴火の時に生まれたフレンズなのかも?」

と、驚きながら言った。

「噴火…ですか…?」

「ええ、今は森の中でよく見えないけど、この『ジャパリパーク』には、動物に当たると『フレンズ』になる『サンドスター』っていうものが噴き出る山があってね、その山がこの間噴火して…」

なにやら、よくわからない単語がたくさん出てきている。詳しいことはよくわからなかったけど、とにかく、私は最近生まれたばかりの「シマウマのフレンズ」らしい。



「色々教えてくれてありがとうございました。」

「いいのよいいのよ。あっ、そうだ、フレンズになったばかりってことは、まだナワバリはないだろうから、ちょっとついてきてほしい場所があるんだ。ここからそう遠くはないし、とてもいい場所よ。」

どうやら、キリンさんはどこかに案内してくれるらしい。

「ぜ、ぜひ連れて行ってください!」

そう言うと、キリンさんは、手で「こっちに来て」といった合図をして歩き始めた。



歩き始めて少し経った時、私は目的地について少し気になって、

「キリンさん、私たちはどこに向かっているんですか?」

と、聞いた。キリンさんは微かに笑いながら、

「それは、着くまでのひみつ!大丈夫、安心して。とても落ち着くいいところだから。」

とだけ言った。着くのが楽しみだなあ。


その目的地に向かっている間も、私は色々なことを教えてもらった。さっきはよくわからなかった「フレンズ」や、「ジャパリパーク」といった言葉や、この時に新しく教えてもらった「じゃぱりまん」といった食べ物や、「セルリアン」という危ないものなどなど…何も知らない私に、始めて会ったばかりの私にこんなにも親切に色々なことを教えてくれるキリンさんには感謝してもしきれない。



だいぶ歩いたので、少し休憩をしようということになった。

「はい、これが『じゃぱりまん』よ。さ、食べて食べて。」

キリンさんは、さっき教えてくれたじゃぱりまんを私に手渡した。

「ありがとうございます。じゃあ、いただきます!…おいしい!」

初めて食べたじゃぱりまんの味は、とてもおいしいものだった。

「気に入ってくれたみたいでよかったわ。」

と、キリンさんは言った。私たちはその後、夢中でじゃぱりまんを食べた。

「…ふぅ、おいしかった。ごちそうさまでした。」

私は、ペロリとじゃぱりまんを完食した。キリンさんも食べ終わったようで、

「よし、じゃあ、休憩もできたし、しゅっぱーつ!」

と、元気よく言った。私も「おー!」と同調した。


歩き始めてすぐ、キリンさんがふと、

「あ、そうだ。ねえ、私たちさ、もうお友達だから、できれば丁寧な言葉じゃなくてもっとかるーい感じでお話ししてほしいな。あ、もちろん、無理にとは言わないよ。」

と言った。

お友達…!キリンさんは私の初めてのお友達…!私は嬉しくて嬉しくて仕方なかった。

「じゃ、じゃあ…よ、よろしくね、キリン!!」

「ええ、よろしく、シマウマ!!」

私たちは握手をした。

と、その時、ぽつりと冷たいものが私の頭に落ちてきた。

「雨ね…この辺は、雨で地面が濡れると土がぬかるんで動きにくくなっちゃうから、ちょっと急ぐわよ!」

キリンはそう言って、移動するペースを早めた。私もそれに置いていかれまいとついていった。



体中がびしょびしょに濡れ始めた頃、ある大きな建物が見えてきた。それを見ると、キリンは、

「着いたわ、ここよ!」

と言った。ここが、キリンの言う「いい場所」…!

「さ、入って入って!」

そう言って、キリンは入り口を開けて、私に先に入るように促したので、私はそれに乗じて中に入った。すると、そこには雨や風を感じない、まるで木の中にいるかのようなとても広い空間があった。私は、この空間に目を輝かせていると、その中にいた、あるフレンズが、

「ようこそ!『ろっじありつか』へ!!」

と、私に言った。

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