なまえ
「それにしても、君はなんのフレンズなんだろう…?そのツノからするに、おそらくシカかレイヨウのフレンズだと思うけど、シマシマ模様か…もしかしたら、珍しい動物のフレンズかもしれないね。」
オオカミさんは、自身の知識を使って私の正体について推理していた。
「先生でもわからないとなると…これは、『としょかん』に行った方がいいかもしれないわね。」
いつのまにか立ち直っていたキリンがそう提案した。
「『としょかん』ってなに?」
「としょかんはね、すごく頭のいい博士と助手が、みんなにわからないことを教えてくれるところよ。」
私の質問にキリンは答えた。
「多くのフレンズは、フレンズになったばかりのときには、自分がなんのフレンズか知るためにとしょかんに向かうことが多いね。君も自分がなんのフレンズがちゃんと知りたいなら、としょかんに行った方がいいかもしれないね。」
オオカミさんも続けて言った。それを聞いたキリンは、
「じゃあ、明日、としょかんに行ってみましょう!私、案内するからさ!」
と、提案した。
「ありがとう、 キリン。すごく助かるよ。」
私は、キリンの提案に乗らせてもらうことにした。
「ただ、ここら辺は雨が降ると土がぬかるんで、とても移動しにくくなるんだ。結構、雨も強くなってるみたいだし、少し長く降るかもしれないね。明日行くのは厳しいかもしれないよ。」
オオカミさんが部屋の外の景色を見ながら言った。ザーッという雨の音が部屋に響いた。たしかに、私達がろっじに入ったときより雨は強くなっている。キリンがなにか考えた様子を見せたあとに、
「じゃあ、明日はここでゆっくりしてよっか。えっと、シ、シマちゃん。」
と言った。
「シマちゃんって、もしかして私のこと?」
「そ、そうよ。これからなんて呼べばいいか、ちょっと考えてみたの。多分シマウマじゃないんだけど、シマシマ模様があるから、シマちゃん。どうかな…?」
「シマちゃん…シマちゃん…!」
私は嬉しくなって、その名前を無意識に口に出していた。
「とっても素敵な名前をありがとう、キリン!!すごく気に入ったよ!!」
私はそう言ったあと、嬉しさのあまり、キリンの手を握ってぶんぶんと手を振った。キリンは顔を少し赤くして照れていた。
シマちゃん。これが私の名前。私の茶色と白のシマシマ模様を表す素敵な名前。キリンが名付けてくれた素敵な名前。
「いい顔いただきました。」
名前のついた喜びに浸っていたところで、オオカミさんがそう言って、なにかを私達に見せた。そこにはキリンと、多分、私であろうフレンズがいた。
「え!?なんでこの中にキリンがいるんですか!?」
驚いた私はオオカミさんにそう聞いた。
「おっ、またいい顔。そうね、私は作家をしているんだ。マンガっていう、絵を描いて想像のお話を作る仕事さ。だから、さっきの光景を絵に描いてみたんだよ。」
オオカミさんはそう言いながら、サッサッと黒い線で白いものにまた何かをかきはじめた。そこにはすぐに、驚いた顔のフレンズが現れた。これもきっと私なんだろう。
「先生のマンガはとっても面白いのよ。『ホラー探偵ギロギロ』っていうマンガでね、私はそれを見て探偵をやり始めたのよ!」
キリンは、自分のことのように自慢しながら言った。
「おもしろそう!私も見てみたいな。」
マンガに興味を持った私がそう言うと、オオカミさんは、
「フフッ、興味を持ってもらえると、ありがたいね。よし、読み聞かせをしてあげようかな。」
と言って、白いもの(「紙」というらしい)をたくさん出した。そこには、たくさんの絵が描いてあり、まるでそこだけ世界が違って見えた。
「さあさあ、『ホラー探偵ギロギロ』の世界へようこそ…!」
「…迷宮入りかと思われたその時、ギロギロの目が…!!っと、ここまでだね。」
オオカミさんの読み聞かせが終わった。すごくたくさん読み聞かせしてもらったはずだけど、楽しくて、あっという間に終わってしまったように感じた。
「くぅ〜!!やっぱり先生の『ホラー探偵ギロギロ』は、いつ見てもドキドキで面白いです!!」
「怖いところもあったけど、それがまた面白いね!続きがすごい気になる…!」
私とキリンはわいわいと感想を言い合った。
「フフッ、気に入ってもらえたようならよかったよ。続きはとしょかんにあるから、聞きに行ったついでに見て来てはどうだろう?キリンには何回も読み聞かせしてあげてるから、キリンに読み聞かせしてもらうといいよ。」
オオカミさんは嬉しそうに言った。としょかんに行く目的が増えて、行くのがさらに楽しみになった。
「さて、そろそろご飯の時間かな。」
オオカミさんがそう言うと同時に、私とキリンのお腹が鳴った。私とキリンは顔を見合わせると、クスクスと笑った。
「確かにお腹が空いたわね。きっとロビーでアリツさんがじゃぱりまんを用意してくれてると思うから、行きましょー!」
キリンがそう言い、私達三人はロビーに向かった。ロビーでは、アリツさんが机の上にじゃぱりまんの入った入れ物を置いているところだった。
「あ!みなさん!ちょうど今、夕食の準備ができたので呼びに行こうとしてたところなんですよ。さあ、こちらへどうぞ!」
アリツカゲラさんはそう言って椅子を引いた。私達はそこに座って、
「いただきまーす!!」
と三人で言い、じゃぱりまんに手を伸ばした。
その時だった。
ガタンッ
ろっじの外から、何かが落ちてくるような音が聞こえた。
「みなさん、誰か外にいるみたいですよ。」
私がそう言うと、
「え、そう?私は何も聞こえなかったよ?」
と言った。他の二人も頷いていた。
「でも、確かに何かが来たような音はしたんです。ちょっと、私、見に行ってきます。」
そう言って、私は席を立ち、ろっじの入り口の方へ向かった。
「外は雨が強いので、お気をつけてくださいね!」
「それにしても不思議だな。シマには聞こえて私達には聞こえなかったとなると、シマは耳のいいフレンズなのかもしれないな。」
アリツカゲラさんとオオカミさんがそう言っているうちに、私は少しビクビクしながら入り口の戸に手をかけて、戸を開けかけた。すると、その時、
「ハッ!!もしかしてセルリアン!?」
と、キリンが大声で言った。
「え!?セルリアン!?」
そう言った時には、入り口は開いていた。
ピカッ!!ゴロゴロゴロゴロ!!
入り口が開くと同時に、外がまぶしく光り、激しい轟音が鳴り響いた。私はそれに驚き、体を縮こまらせた。すると、そこにはさらに驚くべき光景があった。
「大変です!!フレンズさんが倒れています!!」
私は声を張り上げて叫んだ。
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