第2章 愁いの特英士(4)
「ぜひ会ってみたいな。すぐにその、シュタンという特英士をここへ呼んでもらおう」
グイタンは部屋の外に待つ従者に言いつけ、シュタンを呼んだ。
そのときシュタンは書架にいた。銀武の戦士はその多くが、武技の鍛錬に時間を取る。より力を付け、技を磨き、事が起こった時に功績を上げるよう備える。しかしシュタンは、体を酷使することをよしとしなかった。当然鍛錬にも打ち込むが、長時間充てることはない。ある程度の時間、集中して行い、その後は知の吸収へと切り替えるのだった。
グイタンの従者が息を切らせて書架に着いた。副司令官付きにまでなる戦士なので、当然機敏ではある。それでも、やはり力の鍛錬に重きを置く感覚が身に付き、シュタンが書架にいることは思いつかなかった。
「特英士なのに鍛錬もせず、こんなところで時間を使っているとは」従者は小さくつぶやく。振り回されたことで反感を持っていた。その従者の険しい表情に、シュタンはしかし、気にすることもない。言われるままにあとを付いた。
急ぎ足で館内を進み、総司令官の部屋の前で止まり、戸を叩いた。グイタンが出てきて、そこでシュタンを渡したグイタンの従者は、戸が閉まったとたんに緊張の糸が切れて座り込んだ。いつものことだが、この部屋から発せられる威圧感には潰されてしまいそうだ。
一息ついたところで、従者はふと思った。あの特英士は、何一つ尋ねることなく付いてきて、総司令官の部屋を前にしても顔色一つ変えなかった。その落ち着きに、従者は背を寒くさせた。あの戦士は、いずれこの部屋の主になるのではないか……。
中では、シュタンがグナン将に見つめられていた。直立してはいるが、硬さはなかった。グナン将は表情にこそ出さなかったが、心の中で首をひねっていた。
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