第2章 愁いの特英士(5)
グナンは副司令官を、部屋からはずさせた。そしてあらためて、シュタンを見つめた。
この部屋に入って総司令官と向き合っただけで、多くは顔を青ざめさせる。ところがこの新規の特英士は平静を保っている。グナン将は再び首をひねった。
昇進する者の中には、機械のような戦士もいる。感情がなく、単に試戦と知識のみに優れただけの者だ。そのような者は、恐れを抱かない。しかし目の前の若い戦士は、表情にも視線にも、空虚なものがなかった。技能のみの者とは違った。
グナン将はさまざまな戦士を見てきた。ほぼ例外なく、目に、才と情が表れる。それらを的確に見抜き、使いこなしたからこその、現在の地位だった。前に立つ特英士は丈のある身体だが、多くの出世者のような幅と厚みはなかった。これは珍しいことだが、それよりも総司令官は目の方に興味を持った。その目からはなにも読み取れない。感情を瞳が覆い隠しているのだ。
グナン将はすぐにこの特英士が気に入った。これこそ、全ての者が弾き飛ばされてきた任務を背負わせるにふさわしいものではないか。
「よろしい。分かった」
微笑を浮かべて特英士に言ったグナン将は、副司令官の部屋に行き、グイタンと作戦部から任務を聞くよう指示した。
部屋を出たシュタンは、グイタン副将の待つ部屋に向かいながら背筋に一条の汗を感じた。平静でいることに絶対の自信を持っているシュタンだが、総司令官の持つ迫力には、最後まで平常心のままでいることはできなかった。
グイタン副司令官の部屋には個別の指令を取り仕切るズイン作戦部長が同席していた。その文官から、シュタンはみずうみの園への潜入、調査を命じられ、細々と説明を受けた。
数刻のちにシュタンは部屋をあとにし、変わらぬ歩調で、再び書架へと向かっていった。部屋に残ったグイタンとズインは、重い表情で顔を見合わせた。
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