『すべてがFになる』 森博嗣 著
私が愛する本たち、と銘打ったエッセイを書くからには、当然、最も好きな作家である森博嗣についても語らなければなりません。
『理系ミステリ』と形容されることの多い森博嗣作品ですが、その理系っぽいイメージを作り上げたのは紛れもなくこの『すべてがFになる』でしょう。N大建築学科助教授の犀川創平と、その教え子である西之園萌絵が巻き込まれる事件、時々恋愛を軸に進んでいきます。連続ドラマにもアニメにもなった人気シリーズです。ドラマの方はイマイチでしたね。アニメは原作に忠実である上に『四季』シリーズの内容も盛り込まれており、とても良かったです。
何故この『すべてがFになる』が理系ミステリと言われるのか、色々な意見があるとは思いますが、一番大きなウエイトを占めるのは、舞台設定だと思います。
絶海の孤島、そこに暮らすミステリアスな人々。そこまでは、旧来のミステリでもありふれた舞台設定ですね。しかし、そこに建っているのは怪しげな洋館ではなく最新のコンピュータ技術が詰め込まれた研究所で、建物の仕掛けも全てプログラムによって制御されている。純粋にミステリとして本作を考察した場合、最も斬新だったのはこの部分だったのではないでしょうか。
登場人物に目を向けると、冒頭に繰り広げられる数字についての会話、そして、犀川&萌絵(S&M)シリーズにおいて最も重要な登場人物である真賀田四季の存在も、理系の雰囲気を醸し出すのに一役買っていると言えるでしょう。
以下ネタバレあり。
デボラを使った脱出のトリックには確かにプログラムが用いられていましたが、トリックの核となる部分、即ち密室内での真賀田四季の出産と子供の存在は極めて人間的で生々しく、本作が大雑把に『理系ミステリ』などという言葉で括れない作品であると実感させられます。この『理系ミステリ』という刷り込みとメイントリックのギャップが、真相の衝撃度を増幅させているのかもしれません。
本作と同時期に京極夏彦の『姑獲鳥の夏』が発表され、森博嗣自身もトリックが被っていないか心配したそうですが、確かに発想が近くて危なかったですね(笑)
数あるミステリシリーズの中で私はこのS&Mシリーズが一番好きで、魅力的な登場人物、モダンな舞台設定、随所に盛り込まれるユーモアのセンスなどは自作にも取り入れていきたいと常々思っています。『小説家になろう』と『アルファポリス』で公開している私のSシリーズを読んだことのある方ならば、なるほど、と頷いて頂けるのではないでしょうか。トリックの大胆さまで模倣できないのが悔しいところではありますが(笑)
私が最初に読んだ森博嗣作品は『スカイ・クロラ』シリーズで、それをきっかけに森博嗣のミステリにのめり込んでいくことになったのですが、『スカイ・クロラ』に関してはまた後ほど。
私が愛する本たち 浦登 みっひ @urado_mich
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