第8話 膨れ行く憂い

「えい・・・やぁっ!!」


私はシトロン・レイピアを振っていた。

腕がもはや筋肉痛で、痛くてたまらない。

超・基本技<ブルーム・アフェクト>。

だが、青いひかりは一向に出ない。

この世界に来てからおよそ一週間。

普通の人ならもう発動できているであろう時期。


一方、フィールは少し離れたところで剣を振っていた。

左から大きくテイクバック、そのまま右に振り払う。

片手剣水平切り、<バースト>。

その名の通り、斬った軌跡に爆発が起こる。

剣が水色に光った。

___お手本みたい。

私はそう思った。

同時に、寂寥感。

___どうして私はうまくいかないの?このままじゃ・・・このままじゃ、見捨てられてしまう。おいて行かれてしまう。私のことなんかいつか忘れてしまって__


この世界にはお金・・・通称〔セル〕も存在する。

それを貯めるには、スレーズに聞いたところ、モンスターを倒すしかないのだという。

自分でお店を経営するなどということがあれば別だが。

モンスターが出現する場合には、二種類ある。

一つは、自分で出現させること。

ウィンドウを操作すると、モンスター一覧が表示されるので、それを選択するとその敵が自分から10メートルほど離れたところに出現する。

ちなみにそれは、倒すまで消すことはできない。

一つは、森__通称〔フォレスト〕で、ランダムに発生するモンスターを探すこと。

アストによると、そこはウエスト軍と共用らしい。

だから気をつけろとさんざん言われているが、行く気にはなれない。


不安な気持ちがどんどん膨れ上がり、私はしゃがみこんだ。

さんさんと降り注ぐ太陽の下、陰る草。

すると明るい声が自分を呼び、顔を上げる。


「ねえ聞いてよ、さっきレベルが上がってさぁ。同時にいろんなステータスもちょっとずつ上がってさ。よくできてるよなぁこのシステム・・・」


称賛する元気もなく、私はかすれ声を出した。


「私、戦闘職向いてないのかも。ピュアファイターなんてとても無理だわ。基本もブルームもできないんだもの・・・」


口にすればするほど落ち込んでいく。

すると、傍らに置いてあった細剣を手に取った。

そこでおもむろに構えを取る。


「これで突けばいいんだっけ?」


「、、ん、」


まさか、と思う暇もなく。


「・・・せいっ!!」


彼の構えたレイピアの刀身がまばゆく青に光った。

システムアシストに助けられ、迅速の速さで突きだされる剣。

そのライトエフェクトを目に焼き付けられ、私は今度こそ泣きそうになる。


「ほら、簡単だよフレイア。だいじょぶだいじょぶ!」


肩をポンとたたかれ、私は泣き声を出した。


「なんで片手剣使いのあんたができて、細剣使いの私ができないのよぉ・・・」


フィールの逆効果か・・・という声が聞こえ、私は勢いよく後ろに倒れた。

頬を撫でた草は、ほんの少しチクチクした。

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