第6話 「お前が出てけ_____ッ!!!」

私たちは立ち尽くしていた。

何の言葉も出さず、ただひたすらに。


「あのー・・・冗談なら早くネタバレしてくれません?」


私が渾身の切り返しを見せたが、隣に立つアストは首を振った。


「いーや、冗談じゃない。分かってくれよ」


「わ、わかんない!!」


今私とフィールは、部屋の一室の前に立っていた。

ここが私たちの部屋らしい。

そう、


「まあ、年ごろの男女を一室に閉じ込めるというのもなかなか波乱の展開になりそうだがなぁ。すまん、ここしか部屋が空いてないんだ」


「と、年ごろ・・・」


私がぼけっとおうむ返しにすると、アストがにやにやと笑った。

その視線は、どこにむいている・・・の、か・・・

私の胸、、


顔がかあっと熱くなる。

とっさにバッと両腕を胸の前で交差させながら、アストを思いきり睨みつける。


「そ、それ以上見たらぶん殴るかんね!!」


「ふぃ~る~、理性を保てよ?襲うと」

「ば、ばかああぁっ!!」


危うく飛びつきそうになったところを、今まで黙っていたフィールがあわてて制止する。


「だ、だいじょーぶだから・・・きっと・・・」

「こ、このっ・・・」

「まあでもフィールが暴走し始めたら俺のとこに、」

「お、お前は出てけ_____ッ!!!」


全力でアストを部屋から追い出す。

彼は凄愴な顔をして出て行った。

私はしばらく昂進状態だったものの、幸いすぐに水をかけられたようにしゃがみこんだ。


「うぅー・・・どうしよう・・・」


「・・・俺と一緒なのそんなに嫌?」


ハッとして彼のほうを見ると、少々傷ついたような表情を浮かべていらっしゃったので、私は慌てて両手を振り動かした。


「ち、ちが・・・う・・・ってか、もう、、アストがからかいすぎなんだよッ!私は別に・・・いやでも・・・ああ、いいよ何でもッ!!そのかわり、ベッドは離そう・・・」


「あ、ああ・・・うん、そのほうがいいね、、俺も聞かれたくないし」


「え?なにを?」


思わず聞き返すと、彼は少し頬を赤らめ、なんでもないと言った。

なんだか聞くのが怖かったので、そのまま引き下がっておく。



無事にベッドを引き離し、剣を部屋の中央に置く。


「えと・・・それ何?」


「境界線!!ここから先に入ったらゲームオーバーですから」


「は、はい・・・あの、ちなみに破ったらどうなるんです?」


私は少しかんがえこむようなそぶりを見せ、にこりと笑った。


「死刑とかにはしないと思うから安心して」


フィールがすうっと青ざめながらもぎこちなく笑うのを、私は少し面白く思いながら見つめた。


「じゃあ、寝よっか。あ、見ないでよね!」


「は、はい・・・」


ウィンドウのストレージ欄を探すと、予想通りパジャマっぽいものがあったので、それを出す。

細かに説明すると、選択ボタンが出て、それをオーケーすると、目の前に化体が出現するというものだ。

ちなみにそれは、手を触れると実体化する。


来てみると、それはぴったりと私の体に合っていた。

測られたこともないのに・・・と思いながらベッドにもぐりこむ。


「・・・じゃあ、おやすみフレイア」


小さな声が聞こえる。

今更ながら我に返るとやはり恥ずかしいのだが、ここで無視してもさしたる意味はない。


「おやすみ」


それだけ言葉を返すと、私の意識は浅い眠りに引き込まれていった。

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