第11話 接触

「....................あんたは、誰だ?」


長弓銃を身構える仲間を制止して、じろべーは勇気をもって話しかけた。

オウリは微動だにしない。破壊子銃を握りしめ、壁を見ている。


「なぁ、あんた」

「................................................」

「おいっ! お頭が聞いてんだろっ!」

「歳造! おめえは黙ってろ!」


オウリが無視していると思った歳造は怒りを露わにするが、じろべーに一喝されて不満げに黙る。

じろべーはオウリを観察する。変な男だ。右手に握る拳銃はどうみても旧時代の代物としか思えない。だが、戦艦すら撃墜する破壊力は凄まじいの一言。それに、男の格好はこの廃棄星はいきぼしで隠れるように暮らす者のそれではない。


「俺達は住処に戻る。あんたも来ないか?。話を聞きたい」

「お頭! こんな素性も分かんない奴をつれていく気か!?」

「おめえも分かってるはずだ。この人が。それに、ここに置いてくのはしのびねぇ」

「だからって、こいつがSINGLEシングルだったらどうすんだよ!」

「そん時は、俺が命に代えでも仕留める。それで納得してくれねぇか」

「...................お頭に、そんなこと言われちまったら、俺はもうなにも言えねぇよ」

「悪いな」


歳造は言いくるめられて、落ち込んだ。

オウリは二人のやり取りを無言で見ていた。そして、あらぬ方向に視線を動かす。その方角には、荷電粒子発射器を構えたアスターシャギーの姿があった。

右手を広げ、人差し指で下を指差す。『』。そう解釈すべき電子暗号であった。


         ***


サルートコンタクトの狙撃態勢を解除したアスターシャギーは不愉快気味に唸る。


「....................共通認識の電子暗号か」

「大帝國と協同国家体の宇宙紛争。その初期に使われたものです」

「電脳汚染の危険性は?」

「そのように高等なものではありません。ただの、認識疎通の確認信号です」


護衛体マイ・ガードは、電子暗号に偽装した電脳汚染波の危険性と可能性を踏まえている。協同国家体の工作員が電脳ハニートラップと並んでよく使用する手口だ。


「合流しますか?」

「系譜犯とは話さんぞ。会話は全てお前が代行しろ」

「了解しました」

「それと、周防七夜」

「?」

「地球では、カップ麺というやつは三分でできるのだろう?」

「あ、はい。そうですけど」


よくそんな雑学を知っているな。

アスターシャギーは粒子銃ハイ・ガンを七夜に向けた。


「三分で名誉を挽回してこい」

「....................................................」


周防七夜は顔を引き攣らせると、脳天が撃ち抜かれたのだった。

いや、名誉って三分で挽回できるものなのか?。不可能だ。

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バン・デシネ 夢物語草子 @tkto

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