第6話 取引

「ここがどこだか把握しているか?」

「..............................廃棄星はいきぼし。帝國側の」

「訂正しろ! 大帝國だ。大を抜くな」

「................................大帝國だ」

「よし。そうだ、お前の言う通り、ここは廃棄星はいきぼしだ。私達は6010階層にいる。地上に辿り着くには382年かかる」


オウリは無表情だ。驚いてもよさそうなものだが。

アスターシャギーは粒子銃ハイ・ガンのチャージを確認する。6割。悪くない。

見た限り、オウリは機械化を受けている。6割のチャージであれば、完全破壊は無理でも、戦闘不能に近い状態に追い込める。

そうすれば、護衛体マイガード粒子銃ハイ・ガンでとどめを刺せばいい。さて、オウリはどうするのか。


「お互いに脱出するまで協力する。食糧、武器、情報、敵の迎撃。提供できる範囲でいい。手を組もう。さあ、返答を」

「..............................」


オウリは何も言わずに、破壊銃を下げた。

これは意思表示か。同意なのか。アスターシャギーは、僅かに腰を落として攻撃しようとする護衛体マイガードに目配せする。曰く、「動くな」と。


「同意と、受け取っていいのか?」

「.........................................あぁ」


内心、安堵した。

戦わずに済んだのは幸いだ。地球の廃墟でほんのわずかな時間、戦闘を目撃しただけだが、オウリは強い。大帝國軍の白兵戦に特化した猟兵団でも対抗できるかどうか、疑問に思うぐらいだ。

それだけ、オウリの個人戦闘能力は突出している。

前髪をかき上げ、アスターシャギーはオウリの足元を指差した。つられてオウリも自分の足元を見る。血だまりだ。潰れた肉塊がある。


「どいてやれ。それではいつまでたっても再生できないだろう」

「.........................」

「誰だ? と聞きたいようだな。ただの運の悪い地球人だ。死んだ方が天国だろうに、生きて地獄を歩く羽目になった凶運の持ち主だ」

「...............................................そうか」

「出立するのはそいつが完全に再生してからだ。周辺を探り、必要なものを回収するぞ。手伝え」

「.............................................」

「ちなみに食糧の事だが、お前、主食は何だ?」


協同国家体に機械化した兵士は多い。連中が普段、何を食べているかなどアスターシャギーは知らない。純粋な好奇心からきた質問だった。


「....................................................................」

「..................」

「...............................................黒いものだ。湿ったところでガサガサしている」

「...............................冗談だよな。冗談だろう。冗談と言ってくれ。それを見たら私はお前を容赦なく撃つぞ。絶対に見せるなよ。目撃などしてたまるものか!」


アスターシャギーは逃げるように走り出したのだった。


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