第3話 戦闘

【廃墟】


アスターシャギーは、半径一キロ圏内に入ったところで、対戦闘艇ライフルをぶっ放した。光学兵器ではない。予備と保険のつもりで持ってきた電磁投射砲式レールガンだ。大帝國では骨董品に当たる部類だ。

飛距離はともかく、破壊力は落第点をつけられる。廃墟に二メートルの大男が歩いても余裕で通れる大穴が空いたが、さして気にする必要はない。なにせ、すぐにもっと酷いことになるからだ。

強化服を着た兵士が三人、肉体に風穴を開けられ、火花と共に砕け散った。目視観測は可能である。アスターシャギーは勿論、大帝國軍人は末端の兵士に至るまで、サルートコンタクトを装備している。眼球の表面に移植した偵察技能だ。

規模(size)、行動(activity)、位置(location)、部隊(unit)、時間(time)、装備(equipment)。偵察において重要な要素をまとめたものである

大帝國は肉体の機械化を『人類の恥』とする。言うまでもなく軽蔑と嫌悪の対象にある。肉体の欠損は肉体で補うべき。とどのつまり、ここでアスターシャギーの肉体が破壊されても、すでに対策と保険は更新済みである。

故に、恐れる事も無し!。

前に踏み出し、突入してきた自衛隊員に銃口を向ける。


「各員! 全力をもって駆逐しろ! 正義は我らにあり‼」


短髪黒髪の大男、神取1等陸尉が叫んだ。

彼らが握るのは、コルト・ファイヤーアームズ社が製造したM4カービンのアサルトカービン。引き金が引かれ、雨のような弾丸が発射される。

アスターシャギーは地面を深く踏み込み、跳躍する。空中から狙いを定め、二発。二人の自衛隊員が脳味噌から股間まで弾丸が貫通し、絶命する。

空中滑走を開始。アスターシャギーは落下の衝撃を得た右足で、別の自衛隊員の右肩を踏み付け粉砕。トマトを握り潰したように、自衛隊員の右半身が破裂した。

その傷口に素早く、携帯式のクラスター爆弾を埋め込み、首を掴んで、彼の仲間の方へと投げ込んだ。

爆発までの設定時間は六秒。別の自衛隊員と交戦していた護衛体マイガードが高速機動を展開し、アスターシャギーを回収し、一気に距離を離す。

六秒後、炸裂する。内蔵されているのは、十発ほどの超小型焼夷弾。通常のクラスター爆弾に比べれば、規模も面積も破壊力も乏しい。だが、この廃墟内に限れば、十分すぎる威力を発揮した。

数十人分の肉片と骨、血が夥しく、飛び散った。焼ける臭いも酷いものだ。


「!? くそ! そういうことか!」


護衛体マイガードに守られながら、屋根から侵入してきた新たな敵に、アスターシャギーは怒りをあらわにした。

外骨格装甲アーマード・アシスト・スーツを装着した痩躯長身の青年。見るからに地球の原住民ではない、その姿。


「明確な、敵!」


二丁の粒子銃ハイ・ガンから一筋の閃光が射出される。

破壊粒子が真っ直ぐな帯のように直進する。敵と認識された青年は、無骨な拳銃を構える。トリガーを引く。中心が黒色。その周囲を赤色が囲んだ重力波粒子が発射される。

二つの閃光が激突する。廃墟を中心とした一帯に、ドーム状の力場が強制に引き起こされた。


「おいおい! これはさすがに!」

「座標が、崩れる..............」


数秒後、巨大な光の柱が彼らを呑み込んだ。


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