第18話 『地球侵略願望』その4
そのころ、わたくしは勿論知りませんでしたが、自宅では、怪しい事が起こっていたのです。
お引越しの際、棄てればいいものを、そのまま箪笥の奥の奥にしまい込んでいた、あの星型のペンダント。
ななんと、あのペンダントが、勝手に動き出していたのです。
真っ暗な真夜中、古い箪笥の引き出しが勝手に開きました。
そうして、妖しく輝きながら、あのペンダントが宙に浮かんだのです。
まるで生きているかのように、小さく光の鼓動を見せています。
そうして、それは、隙間だらけの古いわたくしの家から、すんなりと抜け出して、夜空に消えて行ってしまったのです。
***** *****
そんなこととは露知らず、わたくしは『警部2052』さんと言い合いをしておりました。
「どうするんですかあ?」
「さて、どうするかな。やつらを全滅させることはたやすいが・・・」
「え?たやすいんですか?」
「そうですよ。この球体を宇宙に出し、その周囲の『境界領域』を拡大して、そこに巻き込めば、アッと言う間に全滅です。しかし・・・」
「しかし?」
「弱点があってね、球体の周囲からは各方向に平等に球形に広がる。地球が入らないようにやろうとすると、ちょっと無理が行きます。」
「そんなすごいのがあるんだったら、ナニか活用方法というものが、あるでしょう?」
「いやあ、考えて無かったなあ・・・」
「考えてください、今すぐに・・・」
「まあ、考えますがね。しかし、もしそうしても、地球にいるやつらの仲間が自爆作戦とかに出たら、結局地球はお終い。どうせまだ太陽系の端には、仲間が大勢いるんでしょうから、あまり意味はないかもしれませんなあ。やはり。」
「こらこらあ、助っ人なんでしょう。問題にならないみたいに言っていたでしょう。」
「はい、そうですな。いや、なんとかします。」
「あたりまえです。まったく。」
「あなた、けっこう、言いますなあ。見直した。」
「え? あの・・・・うん。」
***** *****
地球の警部さんは、拘置所に放り込まれてしまいました。
しかし、こちらもただ者ではありません。
「アニーさん聞いてる?」
警部さんは、お口の中で、もぞもぞと言いました。
「あい。聞いてます。」
「どうなってるのかな?」
「地球にいた、『火星連合』とかの仲間が、世界各地で『乱』を起こしています。警官、軍隊、原発、マスコミ、各種市民団体、オーケストラ・・・各方面です。」
「そりゃあ、地球人?」
「普段は普通の地球人だったはずですが、突然宇宙人として目覚めた感じです。」
「なんだ、そりゃあ。」
「わかりませんが、地球人の遺伝形質の中に隠されていたんでしょう。長年、工作したんじゃないですか。」
「ムムム。内部からの分断か・・・」
「はい。やっかいです。警部2052さんも、ちょっと悩んでます。」
「何か方法ないか?」
「例の、札幌の秘密地下組織が動いていて、レジスタンス活動を始めました。あそこには、超能力者がたくさん集結していました。『火星連合』がわに乗っ取られた軍事施設の奪回などに踏み切ってますし、宇宙人化した人の、地球人復帰作戦にも取り掛かりました。ただ、時間はかかりますな。果てしなく。」
「果てしなくは、困るなあ。」
「アニーの計算では、少なくとも地球の奪還には、10000年はかかると出ました。」
「計算やり直せよ。その前に、ぼくをここから脱出させてほしい。」
「あい。それは直ちに実行いたします。」
すぐ天井に大きな穴が開きました。
その上のお空には、アニーさんが飛んでいました。
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