第9話  どうなってるの?

 わたくしは、警察署の中でいったん保護されました。

 とはいえ、なんとなく、捕まったような感じもするので、やや複雑な気持ちではございましたが。

 

 一方で、北海道の警部さんは、署長室に呼び出されておりました。

 そこには、『警察省』の偉い方がおいでになっていたのです。


「君はまた、困ったことをしてくれたね。」

 その偉い方がおっしゃいました。

「おや、そうですか? しかし、彼らは太古から続いてきた、『柿の木殺人事件』の真犯人ですよ。」

「証拠があるのかね?」

「屋根の上に乗っかってるじゃないですか?」

「あんなもの、証拠じゃない。さっさと片付けてほしい。」

「冗談じゃないです。やっと有能な協力者を得て捕まえたんですから。これから、まずは事情聴取します。」

「これは、希望ではないのだよ、命令だ。」

「ほう?あなたは、どなたの命令を受けているのですかな?」

「君が知る必要はない。」


「なんだか外が騒がしいですな。」

 署長さんが、少しとぼけたようにおっしゃいました。

 この署長さんは、珍しくノンキャリから上がってきた方なのだそうです。


 窓から外をみると、テレビ局の中継車がどんどんと到着して来ておりました。

 わたくしも、入れられていた部屋から、その様子を眺めていましたが・・・


「テレビをつけて見ましょう。」

 署長さんが、大きなテレビのスイッチを入れました。


『・・・ご覧のように、警察署の屋上に『U・F・O』と思しき物体が乗っかっております。周囲は、不思議な光に輝いています。普通の飛行機ではないのは明らかです。局に寄せられたある情報によれば、静岡県などで先ごろ発生した、『殺人、放火、死体遺棄事件』の重要な容疑者が乗っていたのだということですが、詳細は不明です。しかし、この飛行物体は旭岳の上空付近から、ここまで空を移動してきたことは、目撃証言や映像によっても、ほぼ間違いないと思われます。警察は、今のところ何も発表しておりません。また『防衛隊』が緊急行動した形跡も、ありません。『北海道南飛行場』の管制官によれば、『レーダーには何も映っていなかった』とのことです。なお、早朝6時から、政府官房長が記者会見するとの情報もあります。また特に被害は報告されていないとのことですが、静岡県の一連の殺人放火事件の参考人の女性が、行方不明になっているとの情報もあります。地元民は、不安な夜を過ごしています。早く正確な情報の提供が望まれます。』


 テレビでは、地上から撮影された、『UFO』が飛行する姿や、多数の警察車両が移動する様子などが放送されております。

 わたくしも、実名は出ないものの、とうとう、テレビにまで登場してしまいました。


「むむむむ、これはもう 、隠せないですなあ。」

 署長さんが、少し悔しそうに、うなりました。

「なにかやらないと、収まらんでしょうなあ。」

「ふん!」

 警察省の偉い方は、まったく気に入らないというジェスチャーをして、署長室から出て行ってしまいました。


「君、何、企んでるのかな?」

 署長さんが警部に、いくぶん面白そうに尋ねました。

「まあ、少し時間をください。きっと成果が上がりますよ。」

「ぼくは、もう、クビでも構わないがねえ。君はまだ若いしなあ。」

「いえいえ、ここまでやったら、あとには引けませんから。」

「ふうん。まあ、あの人の面倒は見るけどね。せいぜい二日だな。」

「そんなに要らないでしょうよ。それよりも、女性の方は、しっかり守ってやってくださいよ。まだ、仲間がいますからね。しかも、警察内部にね。誰も、むやみに近づけないでください。」

「おいおい、そんな、物騒な。」

「事実ですよ。」

 警部さんは、そう言って、取り調べに向かいました。


 柿子さんと、相方の男は、そのころ、ようやく『船』から降ろされていました。

 しかし、警察官の皆様だけではなくて、例の『警部2050』さまの部下である、たくさんの『ミニ宇宙船』が、ずっと二人を取り巻いていたのです。


 おかげで、柿子さんたちは、逃げるのを、当面、諦めていたようでした。














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