第8話 捕獲
小さな小さな宇宙船たちは、一斉に柿子さんたちの、テニスボールを上下から押しつぶして、羽を付けたような『次元移動船』を取り囲み、その表面全体に張り付きました。
「アーアー、コレデハ、ウゴキガ、マッタク、トレマセン。」
コンピューターが、弱音を吐きました。
すると、柿子さんが、こう言いました。
「こんなこともあろうかと、新機能を付けたんじゃないの。全船体高圧エネルギー放射!」
柿子さんたちの船から、大きなエネルギーが瞬発的に発散されました。
ミニチュアの宇宙船たちが、ばらばらと落ちてゆきます。
「あああー、落ちちゃいます。」
わたくしが、情けなさそうに言いました。
しかし、実のところ、それでは終わりませんでした。
周囲で待機していた、第二陣が再び取りついたのです。
「見た目は同じでも、中身はちょっと違います。もう一度やって見なさいってんだ!」
警部2050が、まるで啖呵を切ったように言いました。
すると、柿子さんたちは同じ手を再び使いました。
ところが、今度は前とは違っていたのです。
「エネルギー、全部いただきさ。」
周囲の小型宇宙船たちが、その放射エネルギーを全て食べてしまったようなのです。
「さあ、そのまま、けん引して行こう。ええっと、何処に行くんでしたっけ?」
警部2050が、札幌の警部さんに確認しました。
「本署に、しょっ引きましょう。屋上に乗せてやる。つぶれるかもしれないが。」
「あなた、また大胆な事を。」
「市民もしっかり見られるし、偉いさん方も、それではさすがに、おかしな手を出せまい。ですよ。」
「はあ。なるほど。やりますか。」
「ああ、秘密なんかにさせとくには、あまりに勿体ないでしょう。」
「まあ、そうですな。地球人にも、もうよい時期でしょうな。では!」
柿子さんの船は、ミニチュアたちに引きずられるように、明々と輝きながら、空の上を、地上の道路に沿って移動してゆきました。
それは、まあ、なんとも美しいと言いますか、とても、神秘的な光景だったのです。
しかも、地上側では沢山のパトカーなどが、サイレンを高らかに鳴らしながら行列を作って、船の下をゆっくりと走っておりました。
旭川市付近の住民たちは、サイレンの大きな音に目を覚ましたり驚いたりしながら、地球始まって以来と思われる、不思議な行進を目撃してゆきました。
それは、あたかも、あの「ピーターと狼」の凱旋行進のようでした。
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