第7話 宇宙警察
「誰が邪魔してるんだ。この宇宙の地球人には、このようなまねは出来まいに。」
男が言いました。
「コンピューター、邪魔してる相手は誰?」
柿子さんが空間に向かって尋ねました。
「ワカリマセン。」
「役ただずさんね。まあ、こうした力があるのは、女王様と、あとはあの刑事たちだけね。」
「まさか、警部2050が追ってきたというのか?」
「あり得るでしょう。あれだけしつこいんだから。ここ6000年は姿を見せなかったけどね。見つけられたんじゃない?」
「ここからは撤退しよう。相手が良くない。この女は連れて行こう。場所を変えればうまくゆくさ。」
「そうね。コンピューター宇宙空間移動して。どこでもいいわ。」
「オソレイリマスガ、サドウフノウデアリマス。」
「なんで?」
「ワカリマセンガ、基本的生活維持以外ハ機能不可能デアリマス。」
「どじ。」
「それは困ったぞ。ここにいつまでも浮いているわけにもゆくまい。地上に降りて逃げよう。」
「相手の思うつぼよ。」
柿子さんが呆れたように言いました。
そこで、わたくしは気が付いたのです。
腕が、円の外に出せる!と。
ここは思い切って逃げるしかない。
わたくしは、向こう側に見えている、空いた空間めがけて一気に走りました。
途中で、絵が乗っかっているキャンバスをひっくり返しました。
「ああ、逃げた!」
男が叫びました。
わたくしは、とにかく走りました。
とは言え、ここは相手のお城の中です。
絶対的に不利なのです。
階段があったので、降りて行きました。
行く手にドアがありましたが、意外にさっと開いたのです。
その先は・・・
「あららららら、ここは??」
「やあ、よかった。さあ乗って。」
そこはもう地上だったのです。
あの刑事さんが、自動車の脇に立っていました。
何が何だかわかりませんが、とにかくその自動車に乗り込みました。
今度はきっと、間違いないだろう、と思いながら。
「いらっしゃいませ。」
誰かの声がしました。
「え、どなた?」
「こいつさ、カーナビがしゃべってるんだ。勝手にね。」
刑事さんが、ニヤッとしながら言いました。
「まあ、最新型ですか?」
「まあ、そうなんですがね、どうやら、ただ者ではないらしい。」
「こんばんは。ぼくは、警部2050といいます。」
「ケイブ、2050さん?」
「はい。いまは、このカーナビの中に隠れています。実はぼくは、結構遠くの、宇宙警察の職員なんですが、あの二人は、長年追いかけてきている、宇宙怪物さんです。」
「ウチュウカイブツ?ってなんですか?怪獣ですか?」
「まあ、そう言ってもいいですよ。ただし、巨大化したりはしません。連中の役目
は、『火星の女王様』という魔女の言いつけに従う事です。その目的は、よくわかっておりません。ただ、行く先々で知的生命体を襲い、仲間を増やし、通常の三倍以上の寿命を与えたり、多額の報酬を支払ったりして何かをさせますが、結局のところは殺害するのです。そうして血を吸ったり、食べたりします。」
「うわあ~。わたくし、食べられるところだったのですね?」
「あなたのことは、気に入ったらしくて、仲間にしたかったようです。食べる方の仲間ですね。」
「きゃああ! いやです、いやです。」
「そうでしょう。だから助けました。まあ、こちらの警部さんの協力も欲しかったし。」
「お互い様だったわけです。」
札幌の警部さんが付け加えました。
「はあ・・・・ありがとうございます。でも、この後どうするのですか?」
「まあ、見ていてください。あの二人を逮捕しますから。これからね。」
「まあ・・・」
「彼らには、まだ仲間がかなりいるはずですから。ここで一気に捕まえます。」
自動車の周りから、沢山の、いえ、無数の小さな光が舞い上がりました。
よく見れば、ミニチュアの円盤のような形なのです。
その小さな青白い光が、星が瞬く夜空に、一気に立ち上って行くのでした。
「ぼくの部下たちです。」
「まあ、かわいらしい!」
「かわいいけど、力はありますよ。」
そのとき、『プープー』と大きな音がし始めました。
こんどは、これまたなにやら機動隊のような重厚な自動車と、パトカーが
どんどんやって来たのです。
「まあ、ぼくにだって仲間はいますからね。今回は偉いさんに邪魔はさせない。」
札幌の警部さんが声高に言いました。
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