第5話

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――藤井の住むマンション


現場に着き部下から現在状況の報告を受け、マンションの管理人と話し合いをし防犯カメラの内容を確認する


映像には少し厚手の服で鞄を背負う男性が映されている


鮎川「これが村辺がマンションに入る時…」


映像を早送りし途中で通常再生に戻す


鮎川「これがマンションを出ていく時…」


映像を見比べて何か違和感がないか確認するが


鮎川(荷物は背負い鞄1つ…とても人一人を入れる収納出来る大きさではない…か)


特筆するような不自然は感じられない


鮎川(特にこれといった変化はあらへんなぁ…強いて言うならマンションに入ってから出ていくのに14分もかかってる事ぐらいやなぁ…

部屋に入るのにピッキングでもして時間かかったんか…?あの紙をばら撒くだけならもっと短くてもええはずやし…)


口に手を当て今までの情報の整理と可能性を色々と考える


鮎川(聞き込みの結果、村辺はどこかしらか車を入手しとる…やけど情報はそれだけ…他に証言はあらへん…部屋は散らかってはいたが荒れてた訳でもなく、布団が干されっぱなしな所

を見ると妹さんは出かける前に布団を干してたんかなぁ…その場合妹さんはまだ帰宅しておらずピッキング…あるいは鍵をかけ忘れた所にあの紙をばら撒いた…いやこれは楽観視しすぎやなぁ…)


思考を巡らせてる中、部下の一人が部屋に入ってきた


部下「鮎川警部、一つよろしいでしょうか?」


鮎川「ん?どうかしはった?」


部下「藤井刑事の部屋…406号室のベランダに干されてる布団の下に真新しい摩擦痕がありまして…」


鮎川「どんくらいの太さなん?」


部下「12mmぐらいだと思います詳しくは鑑識を呼ばないとわかりませんが…」


鮎川「12mm…4階…大体高さとしては10メートルから12メートルぐらいとして……っ!」


何かに気づき慌ててマンションの図面を見る


鮎川「なんでこんな単純な事にきづかったんや…」


部下「はい?」


鮎川(406号室のベランダの隣は三階建てのオフィスビルやけどまだテナント募集中でなおかつ、表通りからは見えにくい裏通りにも面してる…人一人を四階からロープで降ろすのに

掛かる時間なんて精々長くて5~6分程度…少し手荒でもいいのなら2~3分でもいける…それに布団でロープを見えないように工夫すれば反対車線のビルの人に気付かれずにできる。)


鮎川「…すでに妹さんは村辺に捕まってる可能性が高い、急いで車出してこの辺りで潜伏できそうな場所しらみつぶしで探すで!」


部下「えっ?あ、はい!」


地図を広げ現在位置を中心に隠れられそうな場所に印をつけていくが


鮎川(あかん…時間がたちすぎて範囲を絞れへん…)


焦りと早く気づけなかった自責、後悔それらをひっくるめながらも的確に指示を出し、次々と可能性のある場所を捜索していく


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――六階建の廃ビル


一人の女の子が椅子に縛り付けられ眠っている


女の子「ん…」


意識が朦朧としているが目を覚ます


女の子「…?ここどこ?」


最初に目に入ってきた廃ビルの風景に女の子は困惑する


女の子「ゆ…め?」


夢かと思い込み動こうとするが


女の子「痛ッ!!」


椅子に縛られてた為に受け身をとれず大きな音と共にに倒れる


女の子「夢じゃない…?」


ズキズキと痛みを感じながら夢じゃないことを把握する


「やっと起きたんだぁ」


下の階から痩せ細った男が登ってくる


女の子「だ、誰?」


村辺「そうだねぇ、世界一のアーティスト村辺鱇良って言えばわかるよね?」


女の子「………………誰それ?」


村辺「……」


女の子「……」


お互い沈黙する

                           フジイ ミユ

村辺「…私を知らないなんて、アートを知らないと同義だよ藤井 美優くん?」


美優「なんで私の名前を…?」


村辺「おやぁ?もしかして自分が何でこんな所に居るのかも覚えてないのかい?」


村辺の言葉で何故こうなったか思い出そうとする


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確か…学校から帰っていつも通り制服から家着に着替えソファーでくつろいでて


美優(そういえば、そろそろお兄ちゃんが退院するんだっけ)


周りを見渡したら、片付けられてないキッチンの食器、畳まれずにぐしゃぐしゃな洗濯物、脱ぎ捨てられた衣服が散乱してたから


美優(ん~…流石にお兄ちゃんがこの惨状見たら怒る…よね?)


そう思って仕方なく掃除をしてたら、不意にインターホンが鳴って


美優「あ、はーーい」


慌てて玄関へ駆け寄りドアスコープから向こう側を覗くと鞄を背負った男の人がいて…


男性「あ、すいません、今日このマンションに引っ越す者です。つまらないものですが、もしよろしければ」


そう言うと鞄から小さな小包を取り出したのが見えたから


美優「あ、ありがとうございます」


小包を受け取ろうと扉を開けたら…


美優「んっ!?」


扉を開けた瞬間、男の人が隠していた布で私の口元を抑えて…


美優「んー!んー!」


抵抗したけど男の人はそのまま部屋に押し入って来て、そのまま意識がなくなって…


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何故こうなってるか思い出した美優は村辺を睨みつける


村辺「その顔、思いだしたみたいだね」


美優「私を誘拐してどうするつもりか知らないけど、私のお兄ちゃんは警察なんだよ、すぐにお兄ちゃんがあんたなんか捕まえるんだから!」


その発言にクククと笑う村辺


美優「…何がおかしいの」


村辺「いやいや…君は一つ思い違いをしているようだね」


そして、また静かに笑いながら話し続ける


村辺「私の目的は君じゃなくて君のお兄さん、藤井諒太の方さ」


美優「お兄ちゃん…の方?」


村辺「君のお兄さんのせいでね、私は二年以上もアート作れなくてねぇ…その復讐の為に君をここに連れてきたのさ」


そう言うと後ろに置いてあった工具箱らしき物を開けいくつかの工具を手に美優へ近づく


美優「いや…っ」


距離を取ろうと必死に動くが体が椅子に縛り付けられうまく進めない


村辺「君はどんなふうなアートがいいかなぁ~口の中にその眼球を詰めるか、それともその胸をえぐってそこに詰めるのもいいかもねぇ~」


美優「こないで!」


擦り傷など気にせず逃げようとするが村辺に馬乗りにされ身動きが取れなくなる


村辺「とりあえず、その目を取ってからどうするか決めようか」


手に持っているアイスピックのような物を美優の眼球に近づける


美優(助けて…お兄ちゃん…!っ)


グジュ…


嫌な音と共に美優の頬に血が滴り落ちる…


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狐人 @kisaragi_hitoha

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