病魔退散 お社はしご

 この冬はよく寝込みました。

 おかげでろくに散歩もできませんでした。外出しても要件を終わらせるとくたびれていて、散歩をする余力がないのです。

 予防接種をしたにもかかわらず、初詣ではA型インフルエンザを拾いましたし、11月頃から月一以上の割合で体調を崩して寝込みました。

 初詣は毎年厄神さんに詣っています。厄除けの神様に詣ってインフルエンザを拾うようではまったくどうしようもありません。そういえば今年はおみくじもぱっとせず、病気に気をつけろと書かれていました。

 どうにもぱっとしないなと思いながら、神社さんの記事などあさっておりますと、心惹かれるお守りを見つけました。

 ご神紋の双葉葵の絵が描かれた玉に緑の緒がついています。玉の中には御神水が収められているそうで、なんとも愛らしく清らかな印象のおまもりです。

 これだ、と思いました。

 なぜと言われても困りますが、とりあえずこれだと思ったのです。そろそろ花粉も到来し目がシパシパし始めている二月の末、私はそのお守りをいただけるという、下鴨神社にでかけました。

 下鴨神社は幾重にも気になっていたお社です。斎院の仕えた社であり、かの葵祭はこのお社のお祭りです。さらに境内には糺の森と呼ばれる森があるというのも高ポイントです。歴史好きのお散歩好きとしてはぜひ伺ってみたいお社なのです。

 阪急京都線を終点の河原町まで行き、京阪本線に乗り換えてやはり終点の出町柳まで乗ります。駅からの道もわかりやすく、たどり着くのは容易でした。

 結論から申しますと、とってもおすすめできるお社です。特に女性に。

 だって可愛いお守りがやたらにあるんです。有名(らしい)な媛守り。双葉葵の形のお守り。八咫烏の勝ち守り。他にもファイルとか御朱印袋とか印鑑ケースとか土鈴とか。

 危なく散財してしまうところでした。

 もちろん狙いの水守りも見つけました。

 緒の色は緑だけでなく、白やピンクなど各種あります。双葉葵の絵は玉に描かれているわけではなくて、玉の中に錘をつけて浮かんでいました。小さな小判型のプレートの表には「下鴨神社」裏には力強い「病難除」の文字があります。当初の予定通り緑の緒のものを買いました。緑は好きな色なのです。

 もちろんまずしっかりとお社に手を合わせ、御朱印も抜かりありません。さらさらと素晴らしいスピードで御朱印を書き上げる様子は、一見の価値があります。なんというかもう、御朱印マシーンという感じです。

 糺の森はそれ程広くはないのですが、小川沿いに古代の祭祀跡などがあり、とても素敵な散歩道になっていました。鳩が何羽も落ち葉をほじくり返しています。一輪の小さな椿が咲いていたのが印象的でした。

 最後に入り口から入ってすぐの河合神社にお詣りしました。

 御祭神の玉依姫尊が大変な美女だったとかで、日本一の美麗神の幟がはためいています。こちらは絵馬がユニークで、手鏡の形に単純な人の顔が描かれています。その顔に自分の化粧品でお化粧して奉納し、きれいになれるように祈るのです。

 ただ、花粉症の折も折り、たいした化粧道具も持っていませんでしたので、今回は絵馬の奉納は見送りました。次回はぜひフルセット持参で挑みたいと思います。

 代わりというわけでもないのですが、きれいになれるという花梨湯を頂きました。グラスに注いだ温かい花梨湯を、折敷にのせて出してくれます。折敷ごと外の緋毛氈を敷いた縁台に運んで頂くのです。

 甘い花梨湯が花粉症やら風邪やらで荒れた喉に染み渡ります。静かな境内でゆったりと過ごすのは、とても贅沢な気持ちになれました。

 こちらの売店では花梨の形の匂い袋や文香も売っています。なぜ花梨なのか、何か由来があるのかはわかりませんが、どれもとても可愛らしい品です。

 帰りは祇園さんにも寄って、御朱印を頂きました。祇園さんは疫病避けの神様です。インフルエンザなら一応疫病の内に入るのではないでしょうか。私がかかったのはA型ですが、世間にはB型インフルエンザというものもあります。くれぐれも二度と拾わないように、しっかりと手を合わせました。

 知り合いの中学生がB型インフルエンザから肺炎を発症したばかりなのです。健康な中学生なら自宅療養ですみますが、これほど体調を崩しがちの私では大事になりそうです。洒落にもなりません。ここはしっかりとおすがりしておくべきでしょう。

 祇園さんのご近所では着物の方を多く見かけました。京都でも特に繁華な場所のひとつなので、そうでなくてもいつでも観光客でいっぱいです。そのたくさんの観光客に着物の方が沢山混ざるので、それはもう華やかでした。

 祇園さんの境内には食べ物屋台がいっぱいに出ていました。面白いなと思ったのは、ガッツリとした肉系の屋台が多かったことです。ベビーカステラや綿飴、りんご飴などよりも、牛串、豚串、唐揚げ棒などが目立ちます。外国人観光客が多いことと関係あるのでしょうか。

 昼間なので残念ながら舞妓さんや芸妓さんのお姐さんがたをお見かけすることはなく家路につきました。

 帰り道に家の近くでカラスノエンドウが咲いているのを見かけました。

 散々だった冬もそろそろ終わりです。

 

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