梅田 本屋巡り散歩

 散歩するためだけに出かけるような贅沢は、中々時間的にも難しい。それで何か用事のついでに散歩するかと言うことになると、多いのは買い物のついでと言うことになる。大阪市内の阪急沿線に住んでいる人間が買い物のために出かける場所といえば、まず梅田を上げるべきだろう。

 梅田と行っても実はそこそこ広く、しかも買い物というのはこまこまと歩き回りがちになるので、出かければまず一万歩はかたい。

 しかも移動は必ず三次元になるので、エレベーターやエスカレーターをある程度(例えば三階分までの移動では)使用禁止とかにすれば、かなりの運動量を確保できる。

 コースは色々考えられるけれど、私がよくやるのは本屋巡りだ。

 まずは阪急電車の梅田駅中央口から外に出て、右手に並ぶ店の中にあるブックファーストから始めたい。

 ここは小ぶりな店だが新刊が早くて充実している。開店時間が早いのも特徴だ。

 次の目的地は中央口からエスカレーターで下りたところにある紀伊国屋梅田本店だ。ここは昔からある大型書店だ。店頭で雑誌や話題の新刊の売り出しをすることも多い。

 紀伊国屋を出たら阪急百貨店の方への道を選んでまっすぐ進み、阪急百貨店の手前で右に折れる。よくテレビにも登場する横断歩道をわたるとJRの大阪駅だ。

 この横断歩道の面白いところは、赤になると青になるまでの時間をデジタル表示するところだ。ほぼ必ず試供品の頒布や、宗教や政治の街頭演説を行う人がいる。

 横断歩道を渡って左手のバス停側によったところが、新聞社が号外を配る場所だ。今回の狙いは本屋なので、反対の右手に折れて真っ直ぐに進む。

 突き当りを左に折れてさらに進むと、二階の連絡通路に上るエスカレーターのそばにブックスタジオがある。ここはそれほど大きくない割に新刊のサイン本を扱っていることがよくある。あと、個人的にここの本の掛紙のデザインが好きだ。

 さて、できればこの辺りで昼食を調達しておきたい。

 せっかく梅田に出たのだからちょっとおしゃれなものにこだわるなら、ルクアの地下にテイクアウトのお店が沢山ある。

 百貨店でお弁当を買うならここから近いのは大丸。大阪人が絶対的信用を置く阪神百貨店地下食にも足を伸ばせる。

 さらに大阪駅ということに注目すると各種駅弁も売っているし、JR一階の紀伊国屋、ちょっと戻ってブックファーストの並びの成城石井などの高級スーパーのお弁当やお惣菜も捨てがたい。

 馬鹿にならないのがコンビニで、梅田のような場所ではお弁当の種類も多いし新製品も揃う。

 お気づきになっていると思うが、ここではテイクアウトにこだわっている。確かに梅田には各種飲食業が集まっている。値段も種類も無数のランチから選ぶことができるだろう。だが、考えても見てほしい。今、試みているのは本屋をめぐる「散歩」なのだ。これで普通に飲食店に入ったら単なる買い物になってしまう。

 私はここに野外での食事という要素を加えることによって、散歩として(気分的に)成立させることを提案したい。梅田で野外で食事とか言うと、オープンカフェなんかを連想しそうだが、実は梅田にはお弁当を食べるに相応しい場所がいくつもある。

 昼食を入手したら二階から渡り廊下を渡ってグランフロントに向かう。ここの六階には品揃えのよいなかなか大きな紀伊國屋書店がある。

 紀伊國屋書店を出たらさらに上の階へと上がってみよう。レストランフロアのさらに上に屋上がある。

 お弁当におすすめのスペースはここだ。

 ベンチもテーブルもあるし、よく手入れされた植え込みもあって、小さな公園のようになっている。そういう場所なので昼時なら他にもお弁当を食べている人もいる。ゆっくり食事をしたあとは、戦利品で読書を楽しむのもいい。

 この場所の難点としては強風などで閉鎖されることも多いという事だろうか。しかし心配することはない。その場合は二階から渡り廊下を逆に戻って大阪ステーションシネマを目指そう。エスカレーターもしくは階段を幾つも登ればステーションシネマの真下のレストランフロアにつく。ここから外に出れば、そこでも多くの人がお弁当を食べている光景を見ることができる。

 こちらのテラスはコンビニも同じ階にあって便利なのだが、グランフロントに比べるといつでも人が多いのと、植え込みの気合が足りないことが難点だ。

 これも個人的な好みなのだが、ここではぜひエレベーターでなくエスカレーターや階段を選択したい。特に最後のレストランフロアへ上る長いエスカレーターは必須だ。UFOに乗り込むような感じがしてちょっと楽しい。

 昼食のあとにはルクアイーレ九階の蔦屋書店に寄りたい。ここは本だけでなく雑貨などの品揃えが楽しい。スターバックス併設のとてもおしゃれな本屋だ。

 眺めて楽しい本屋という意味ではピカイチではないかとおもう。

 ここまでで一区切りだが、これだけ回ってもお目当ての本が見つからない、あるいは本屋巡りに満足していない場合、とっておきを目指す。

 茶屋町のロフトの隣にある丸善ジュンク堂書店だ。

 七階建てだかのドーンとしたビルが丸ごと本屋というこの夢のような店は、その売り場面積に相応しい素晴らしい品揃えを誇る。ここを最初から目指すときは、他の店には回れないものと覚悟するしかない。次から次へと様々な本に引っかかって、さまよってしまうものと決まっているからだ。

 さて、実はこの素晴らしい本屋は、阪急梅田駅から見ると、大阪駅の反対側にある。つまり今までと逆の方向に戻る必要があるのだ。

 とりあえず紀伊國屋書店梅田本店まで戻ろう。ここまでかなり歩いているが、実は上下移動も多いので、まっすぐ戻れば意外に遠くない。紀伊國屋書店の入り口に向かって右手に進み、そのまま建物から出てしまおう。

 道路を渡ったら左に折れて道路沿いに進み、NU茶屋町を目指す。NU茶屋町を貫く通路を通り抜けたら、さらに左に折れマクドナルドに突き当たったら右。行く手に見える右がロフトで左が目的地である丸善ジュンク堂書店だ。

 この、JR茶屋町ライン沿いに相当の店が集まるので、適宜本屋以外の店にも寄れば買い物ついでの散歩コース完成だ。

 梅田を歩くコースだが、雨が降るとお昼ごはんが成立しない。そんなところもちょっと散歩っぽくないかなと思っている。

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