やさしい話
マツボックリの夏美さん
夏美さんは森の松の木に実ったマツボックリ。
「種さん、風に乗って遠くまで飛んでって~」
夏美さんは晴れた日にめいいっぱい体を広げて風を受けます。
すると中に詰まった松の種がヒラヒラと遠くの方へ飛んでいきました。
「遠くまで飛んで大きく育つんだよ~、ファイト~!」
夏美さんは飛んでく種たちにエールを送ります。
雨の日は中の体を小さくして種を守ります。
「雨に濡れないようにね。晴れるまで私が守ってあげるわ」
種を大事に大事に包み込んで優しく話しかけます。
よく晴れ日、夏美さんはいつものように体を大きく広げて種を送り出していました。
「元気に育つんだよ~」
すると夏美さんを見つけた鳥がやってきて夏美さんを突きだしました。
「痛い! 痛いよ! やめてよ!」
夏美さんは突かれて大事な松の種を取られてしまいました。
鳥はおいしそうに松の実を頬張っています。
「返してよ! 大切な種なのよ!」
夏美さんは必死に訴えますが、鳥は口の中の実を食べ終わると、また夏美さんを突いて種を取ろうとします。
「きゃっ!」
勢いよく突かれたせいか、夏美さんは地面に落ちていってしまいました。
鳥はその様子を見て羽ばたいて去っていきました。
「まだ種が残っているのに……」
夏美さんは地面に横たわったまま、シクシクと泣いています。
そこにキツネが通りかかりました。
「僕はキツネのミッチー、そんなに泣いてどうしたんだい?」
「まだ種が残ってるのに鳥に突かれて落ちちゃったの」
夏美さんはミッチーに鳥に突かれて落ちた事を話しました。
「そっか、じゃあ僕が遠くまで運んであげるよ」
「えっ? 本当? ありがとう」
夏美さんは泣くのをやめて笑顔になりました。
ミッチーは夏美さんを加えてトコトコと歩きます。
森を進んで野原にやってきました。
「ここでいいかな?」
ミッチーは夏美さんを降ろしました。
「ありがとう、ミッチー」
夏美さんは体を大きく広げてお礼を言いました。
「どういたしまして、またねー」
ミッチーは再び森へ戻っていきました。
夏美さんは種を飛ばそうと体を広げていますが、種は飛んでいきません。
「あれ? なんでだろう?」
そうしている間に、人間の小さな女の子がやってきて夏美さんを拾いました。
「マツボックリだ~。このマツボックリすごい開いてるよ!」
女の子は興奮して、夏美さんを持ったまま走って家に帰ります。
「あわわわ~、目がま~わ~る~」
夏美さんは大きく揺られて目を回してしまいました。
目を覚ますとと夏美さんは小さな机の上にいました。
女の子が夏美さんを持って紐のようなものを引っかけています。
「きゃっ! 私どうされちゃうの?」
夏美さんは不安になってプルプル震えていました。
すると女の子は夏美さんに紐を通した後、窓際に吊るしました。
「よく乾燥させた方がいいのよ」
大人の人の声が聞こえます。
「は~い」
さっきの女の子の声だ。
夏美さんは気づきました。
翌々周りを見ると高い所にぶら下がっています。
そこにヒュ~と風が吹きました。
「体を広げて種を飛ばさなきゃ!」
夏美さんは大きく体を広げて種を飛ばしました。
「元気に育ってね~」
夏美さんはやっと種を飛ばすことが出来ました。
種を飛ばせたので夏美さんはご機嫌です。
体をもっともっと大きく広げました。
女の子は大きく広がった夏美さんを手に取って、何やら色を塗っています。
夏美さんはどうされるのか不安でしたが、少しすると木の上に吊るされました。
それはモミの木でした。
「すごい奇麗になったね」
女の子は奇麗におしゃれをさせた夏美さんを見て笑っています。
夏美さんは自分が奇麗にしてもらった事に気づいて嬉しくなりました。
そこへモミの木が夏美さんに話しかけます。
「今日はクリスマスだよ。君も一緒に楽しもう~」
夏美さんは大きく体を広げました。
女の子もそれを見てとても幸せそうです。
今日はみんな楽しいクリスマスになりそうですね。
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