葬送
夢のようだった。がむしゃらだった。泣いた。怒り狂った。苦しんだ。それは遠い日にあって今に至るまでの事。そこに君は常に居た。傍らでなくとも声を聞けなくても君は常に我と共にあった。だが、遂には終わりがやってくる。皺の手を握り締めて去って行った君。もう一緒には居られない、我が友よ。だからせめて見届けるよ。君と歩いた夢路の果てを。
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「飄々として尊大、それでいて人当たりの良いこと。これで始末に悪くなければ実に愛らしいのにね」
「宿命に義理堅いことだ」
「その存在は幾多の災厄に勝る悲劇」
「婆1人に手間をかけるか」
「希少だろ?」
「物言う廃墟だ」
「惜しくはない」
「実にユーモラスだ。頭がな」
「
「安心しろ。すぐ連れて行ってやる」
「世代的には肉弾三勇士ってとこか」
「見事に砕けたものな」
「なんで!? なんで酷いことするの!?」
「してはならんのか?」
「躾がなっていない。飼い主の、だが」
「犬ころ屠るお仕事ねぇ」
「フランス人の暇潰しか」
「我らが戴く存在に穢れなどあってはならぬ。我らを統べる存在の意志が我らと異なってはならぬ。彼女は実に素晴らしい! これ以上の潔白は無く、これ程に染め易きモノも無いのだからな」
「結末を先に延ばした所で、時は戻らん」
「あれだけのことをして、未だに懲りないとは」
「魂が宿ることが必ず良いとは言えないのよね」
「お休み、マザー」
「はんっ、お笑い草。その程度で抑えきれる腕とでも?」
「祝福あれ」
「屈服せぬ敵は嫌いじゃない。圧倒はつまらんのだ」
「恩寵あれ」
「幾つもの結末を見た。驚く事でもない」
「ゴールは目の前だ」
「死の時に悔いを遺すな。貴様の全てが決まるのだからな」
「異端の聖女、とは言い得て妙だね」
「幾らでもかかってこい。群れを作り、揃って我が鑓のサビと消えるがいい!」
「女が
「苦しみは僅かに聞こえた。それからは何も聞こえなかった」
「追い詰められれば藁をも掴むよ。だったら当然ね、放り出された私の剣を拾って使うのはさ!」
「反乱者は生死いずれの結末を以て己が始末を得る覚悟はある。私の父は良く背き、良く死んだ。それが報いだ。喜ばしき最期を得た。しかし、現世はあまりに不快だ。反乱者の一味の倅どもと薄々知りながら取り立てて悦に浸り、かの次第を矮小にした。その甘き事、その偽善・無策断じて見過ごせるものではない。君達は我が父達を愚弄した。その血と行いをも汚した。私は許さない。父の死を、革命の在り方を汚させない為に、首相、私は反乱する」
「――覚悟してよね? アナタは、ここで、今宵、死ぬ!」
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その後、戦線は安芸・出雲磐見方面で膠着、これを機に停戦協定が結ばれたが、屋代島失陥後に畿内海軍が無差別攻撃を実行したため、東京政府内には「新兵器」を使って畿内を武力制裁せよ、との強硬論もあるという。だが…吉野首相にとっての真の脅威は、彼女のすぐ近くに迫っていた。
首相の側近にして相棒でもある蓮池夏希…彼女の正体は、首相の親米左派路線に反発してクーデター(光復十五年の九州政変)を謀り、そのために戦死した
しかし、先の戦闘で邂逅した、宇喜多軍のある傭兵の言葉が、最後の決心を促した。彼は、「ヨルダンの男」は言った。
「己の生まれ、成り立ちを忘れて生きられようものか!」
方広院の仰る通り、言の葉には人の心を動かす力がある…良い意味でも、悪い意味でも。蓮池こと江上夏希は、「己の由来」から逃れたくない自分に気付き、後は「それを為せ」との
「我が名は江上、江上夏希」
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