第127話『どうでもよくないんだが……?』







 侵入者どもを摘まんで一人ずつ地面に下ろしていくブラックドラゴン。

 侵入者どもは、置かれたそばからニコルコの騎士たちによって拘束されていく。

 置く、拘束が一定のテンポで交互に繰り返されていく連係プレー。


 俺は餅つきを連想した。





「で、森って? どこの森だよ」


 ブラックドラゴンに訊ねる。

 賊を連れてきたことを褒めてないけどまあいいよね。

 こいつ猫じゃないし。


『え? 人間が魔境って呼んでる森のことだけど? それより、ねえ、聞いてよ! 猫たちがしつこく追いかけ回してたから遭難しかけてる人もいたんだよ?』


 なんと、侵入者どもは魔境に集結していたらしい。

 よくもあんなところを潜伏先に選んだものよなぁ……。

 いや、ちょっと待て。


 猫たち、魔境に行ってるの!?

 あそこには獰猛な魔物がたくさんいるから危険じゃないか!

 魔物にいじめられて猫たちに何かあったら大変だ!


『そんな心配、いらないと思うよ……?』


 ブラックドラゴン、てめぇ何を言ってやがる!

 猫はなぁ、か弱いんだぞ? 怖がりなんだぞ? 低い声が苦手なんだぞ?

 魔物に怒鳴られでもしたら――


「猫はどうでもいいですが」


 ジャードが口を挟んでくる。


 いや、どうでもよくないんだが……?


「これから侵入経路や目的も含めてやつらを取り調べなくてはいけません。魔境にわざわざ潜伏していたということも気がかりですし。ヒョロイカ卿も協力して頂けますか?」


「俺? まあいいけど。カツ丼でも作ればいいの?」


「…………」


 呆れたような視線。

 わかってるよ。

 真偽判定だろ。






 俺のスキルで嘘を見抜きつつ、ジャードやゴルディオンたちが尋問した結果、連中の所属と目的、侵入経路が判明した。


 やつらは王都の第十騎士団の騎士たちで、ニコルコの村々で略奪行為をするよう指示されて真夜中に魔法陣でやってきたらしい。


 スキルで判別した結果、少なくとも彼らは小デブ王の命令だと認識している。

 だが、本当に小デブ王が命令したのかは王都に使いを出して確認を求めているところだ。

 王城にいる誰かがハルンケア8世の名前を騙って命令した可能性だってあるし。


 本当だったとしても素直に認めるわけないだろうけど。

 ただ、こちらとしてはどちらでも構わないのだ。

 お前が送った連中は失敗したぞ、その程度のことはすぐに看破できるのだぞ、と。


 企んだやつにそう釘を刺すことが狙いだから別に白状させる必要はない。

 ……と、ジャードが言っていた。

 ちなみに第十騎士団の連中は略奪する理由や魔法陣の詳細など、肝心な部分は一切知らされていなかった。


 騎士のクセに理由も聞かされず村を荒らしてこいって言われて抵抗なく乗り込んでくるとか、とんでもねえクズどもだなぁ……。


 聞けば、第十騎士団はそういう問題のある輩たちを放り込んでおくための部隊らしい。


 ニコルコの騎士団も人数増えてきたし、そういうヤベーやつらが出てこないよう定期的に教育して規律を正していかないといけないな。


 てか、元勇者のパーティ候補なのにそんなとこに所属してるフラ――フラダンス君って……。

 公国の基準では騎士団長を凌ぐ天才扱いじゃなかったのかよ。

 もし一緒に旅してたらマジで呪いの装備だったじゃん。





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