4月18日の宵闇


 昨日とは打って変わって

 今夜は月が出ていない。

 民家の光が消えた通りには、底なしの闇が広がっている。


 今日は、昨日委員会室で東山先生に言われたことをずっと考えていた。

 相手のことがわからないとき。

 相手のことがわかるとき。

 その違いは、誰が考えても明確だ。

 

 そこに、先生はどんな違いを見出しているのだろうか。

 きっと、おれとは違う視点から

 物事を見ているのだろう。


 それはおそらく、中原さんにも同じことが言える。

 なんとなく、おれと彼女は似ていると思っていた。

 意志がないところ。

 常に相手の様子をうかがっているところ。

 自分を主張しないところ。


 でも、それはたぶん似ているようで

 全然違うものなのだ。

 彼女の表面ばかりを見て

 本当の彼女が見えていなかったのかもしれない。

 いや、見ようとしていなかったのだ。

 勝手に彼女のことを分かった気になって

 勝手に彼女のことを似ていると思い込んでいた。

 

 窓の外を見ても、月明かりはない。

 不気味なくらいの闇が広がっている。

 昔、夜に外へ出るのが楽しかった時期がある。

 こことは違い、都内の夜は煌びやかで

 昼にはなかった賑わいが、そこには広がっていた。


 鮮やかなネオンの光は、まだ小さかったおれの目には

 最も近い異国のような存在で

 見る度にワクワクしていた。

 

 でも、ここは違う。

 どこまで行っても闇。

 そこに、人の賑わいは存在しない。

 ワクワクするような光もなく

 ただ、永遠に続いているような気がする道が

 遠い先まで伸びている。

 

 明日はいよいよ、歓迎会の企画をまとめることになっている。

 準備はできている。

 一応、精一杯のことは考えたつもりだ。

 結局のところ出たとこ勝負になるかもしれない。

 それでも、少し面倒くさいことになるかもしれないけど

 明日は、ちゃんと中原さんと話してみようと思っている。


 部屋の電気を消して、カーテンを閉める。

 さっきよりも外の闇が薄れて見えたのは

 きっと宵闇に目が慣れただけなんだろう。

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