第17話 魔王
(なんとも勝手な話しじゃの。付いてくると言ったり、あの様な悪魔でも見る様な視線を向けて来たり)
『……いいんだよ。最初からその積りだったし、ドラゴンと戦ったのだって彼女達に言う事を聞いてもらう為の行動だったんだから』
(……しかしのぉ)
他に何か言いたげのコンちゃんの言葉を制止。俺は女騎士に念話を送る。
『構わん。俺は最初からお前達を側に置くつもり等無かったのだから――その騎士はお主達の仲間か?』
「仲間ではないが、弟の様なものだ」
『……そうか』
そっかぁ、彼女の弟みたいな存在。親戚の子とかそんな感じかな?を俺が目の前でボッコしたって事?そりゃ怒るよね。
でもこれで彼女達が俺に付きまとうことも無さそうだし、これはこれでいいのかな?いいよね。
『コンちゃん。ここには居づらいしそろそろ行こうか』
(そうじゃな)
回復を続けるエルフを横目に俺とコンちゃんは西へと歩み始めた。
「ま、待たれよ!ゴホッゲホッ」
振り返ると、身体からの蒸気が少し落ち着いた自動回復中の先程までドラゴンだった男が上半身を起こして俺を呼び止めた。
「お主は何者だ?俺は腐ってもドラゴン。そのドラゴンを意図も容易くここまでしてくれる存在。もしかしてお前もドラゴンの一族なのか?」
あ~そっか。ステータス遮断の鎧と兜も被ってるから分からないんだ。
「いや、言いたくなければそれでいい。だが俺をここまで追い詰めた奴の名前だけでも教えてはくれぬか」
オークですとか言わずにすむなら名前だけだったらいいか。
『俺の名はヤマダク・ズオーだ』
その名を聞いて目を見開く元ドラゴンのおっさん。俺もたいがいおっさんだが、おっさんが驚いた顔をするのも滑稽だな。
「ズ王……だと?」
俺とドラゴンだけの念話だったが、ズ王と言う言葉に女騎士、猫耳、エルフが反応する。
なんだよ。本当はクズオだけど、ステータスにズオーって書いてんだからそんな驚く事か?
『俺も質問いいか? ここから一番近い神殿ってどこだ?』
「ま、まさか神殿へいくのか!……いや、ズ王と言うならそれも当然か。ここから東へ徒歩で3日程でラ・ピニオン王国へ入る、そこから5日で王都だ。そこに女神メディアの神殿があるはずだ」
女神メディア?『コンちゃん、知ってる?』
(おぉ、メディアか!知ってるもなにも、あの女神だけは我の味方じゃ!)
『ならそこへ向かおうか』(コクコク)
コンちゃんが首を縦に振るのを見て。
『そうか。感謝する』
「けっ、ドラゴンが最悪の魔王に感謝される日が来るとはな」
ん? 今なんった? 最悪の魔王なにそれ?
「ならん!ラ・ピニオンへは行かせぬぞ魔王め!」
またまた女騎士なんか面倒臭い事を言い出した。
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