第14話 すてーたす



『おいお前ら!悪いがもう一度このマントを被れ!』


 突然の俺の叫びに呆然とする三人だったが。俺が天人のマントを投げるとそれを受取る。


「ま、まさか先程ドラゴンゾンビはまた復活するのか!」


 目を腫らしたままの女騎士は少し怯えた表情を見せるが。


『いや、それはない。そのマントは新たな狩りの為にお前達に貸し与えるのだ。くれぐれも顔を出すな』


 少し怒気を含む俺の物言いに、いそいそと透明になるマントを三人で羽織る。うん、これで防御力もバッチリだし、ドラゴンにも気付かれまい。


 三人が隠れたのを見届け、俺はコンちゃんに声を掛ける。


『じゃもう一発ドラゴン退治と行きますか。いきなりメギドギガンテス撃っちゃうぞ♪』


(いや、無理じゃ)


 何が無理だと言うのだ。俺とコンちゃんコンビに怖い物なんて在るはずがない。そもそも1年がかりでダンジョンを制覇した俺達に敵など存在しないのだ!


『ほら、早くしないと突っ込んで来るぞ』


 上空で滑空してくるドラゴンを見据え、手をコンちゃんへ伸ばす。


 だが、コンちゃんの感触はない。


『あ。』


 そこで思い出す。


(さっき人化した所ぞ、あと24時間弱はこのままじゃな。任せた)


……見ればコンちゃんも三人のマントへいそいそと忍び込んでいる途中だった。



 そう言えばコンちゃん1日は人の姿のままだったんだ……と、落胆した時。心をヌルッとした物が駆け抜ける。


 この感覚は知っている。誰かが俺のステータスを覗き見た時の感覚だ。


 今俺のステータスを覗くとすれば、三人の誰かって事はないから上空のドラゴンくらいなものだろう。だが甘い。


 ダンジョンで苦労して手に入れた俺の鎧は、ステータスを盗み見されないと言う不思議装備なのだ!


 それでは逆に俺がお前を覗いてやろう。どれどれ。


 俺は不敵な笑みを零し「ステータスオープン!」とドラゴンへ叫ぶ。





名前 ドラグーン・ザクセス

年齢 1280

職業 ドラゴンマスター

種族 ドラゴン(レッドドラゴン種)

称号 殺戮者

Lv 98

状態 良好

HP 88900・88900

MP  3059・3059


通常スキル

威圧10・怪翼78・自動回復25


固有スキル

 ヘルファイヤー

 合体暴炎旋風翼

 人化 


レアスキル

 熱核自爆






名前 リュウイ・クラム

年齢 15

職業 竜騎士

種族 人間(ユニーク種)

称号 ドラゴンライダー

Lv 35

状態 良好

HP 7000・7000

MP 3000・3000


魔法スキル

 風魔法

 ウィンド(中級含むトルネードまで)

 雷魔法

 ライトニング(上級含むライトニングエクスキューショナーまで)


通常スキル

 ジャンプ各種統合35・槍術統合37・俊敏39・自動回復5


固有スキル

 ドラグーンシュート

 無敵ジャンプ(5/5) 


レアスキル

 なし


※勇者の系譜





 ん? ドラゴンに絞ってステータスを開いたのになんか二つ出た。



『おいコンちゃん、なんか二つ出てんだけど』


 そんなコンちゃんは、マントの影から[what?]なにが?みたいに両手挙げていた。


――お前もか!



――――

――


――数分前。



 地上より1000メートル上空で、ラ・ピニオンを目指す竜騎士リュウイがドラゴンに念話を送っていた。


『冒険者ギルドの情報だと、この辺りの森でシェリーさん達のパーティが新ダンジョンの捜索に出ているはずなんだけど大丈夫かな』


(うむ、そのギルドで儂も少し厄介な情報を入手しておる。その情報と、恥ずかしい話しじゃが、我らドラゴン族よりゾンビ化した者が出たとの情報とがこの辺りの森で合致するのじゃ)


『ドラゴンゾンビってその昔勇者によって倒された三国滅亡で有名な伝説の?』


(個体は違うだろうが、我らドラゴン族は闇深い未練を残して死んだ場合、ゾンビ化する事が希にある。力は我ら生者に劣るものの、何度も復活してはその度に強さも増す厄介な奴だ)


『そんな者がこの森に……僕らでも勝てないかな』


(数日掛ければ或いはと言ったところだろうな)


『シェリーさんは無事だといいんだけど……さっきからシェリーさんへ念話を送ってるんだけど返事がなくて』


 彼の中のシェリーは女神と言っても過言ではない。

 こんかいの任務も、戦争の先駆けと言う胸くその悪くなる任務だったが。シェリーが絡んでいる事を知り、志願した程彼は彼女を気にしていた。



(それは少々心配ではある……おい、リュウイ。前方に厄介な者の気配を感じる。ステータスの確認は出来るか!)


『ちょっと待って――ダメだまだ範囲外だ』


(では少し降下する。もしドラゴンゾンビであれば早急にシェリーと仲間を見つけこの地域から離脱するぞ)


『了解!』



 赤いドラゴンは滑空しながら目標へ近づと。


(ん?あれはドラゴンではないな)


 その言葉にリュウイは少し胸をなで下ろす。


『そうか、でも一応ザクセスが厄介って感じたのならステータスは確認しておくよ――ステータスオープン』


(……どうじゃ)


『……ダメだ。アイテムか魔法で阻害されているみたいだ。ここは無視してシェリーさんの捜索を続けよう』


 リュウイがそう判断したその時。


(リュウイ!敵からの攻撃だ!掴まれ!)


――カン!


 彼がドラゴンに繋がれた皮のロープを握りしめたのと同時。竜騎士の兜を何か固い物が掠めていく。

 その勢いは目の前で熟練の魔道士がウィンドカッターを放ったかの様な威力をもっており、リュウイも危うく両手を放してしまう程だった。


『なに!?なんの魔法!?』


(なんて奴だ……地上から我ら目掛けて石を投げてきておる)


『そんな馬鹿な。石を投げて今の威力なんて……何かの魔法を石に乗せた?』


(リュウイ!ここは二手に分かれるぞ!)


『わかった!』


 リュウイは手綱から手を放すと、脇にホールドされていた青身に金と銀の装飾が施された一本の槍を手にし、降下中のドラゴンの背から立ち上がる。


『じゃ行くね!――ジャンプ!』



 

――――

――


――




[what?]ってなんだよまったく。そもそもオークの唯一のステータス的な存在の棍棒さんが使えないってどう戦えてんだよ。


 それに相手のステータスを見た限り、ドラゴンゾンビよりちょいツヨイ。


 奴を圧巻のうちに倒せるスキルをステータスを開いて探してみる。


 開いてつくづくアレだなと、考え込むが。今は深く考える時間も無いのでサクサクいく。




名前 ヤマダク・ズオー

年齢 不明

職業 不明

種族 オーク(進化種ユニーク種)

称号 ダンジョン滅殺者

Lv 20

状態 女神ティーリケの呪い(重)(あと9,997ポイントで解除可能)

HP 78643200・78643200

MP 52428800・52428800


通常スキル

 怪力2000・打撃2000・肉厚2000・体術受け身2000・棍棒術2000・投擲2000・聴力倍化・視力倍化・念話強化

 

固有スキル

 経験値変動取得(邪神眷属を一定数討伐でボーナス)

 人化:(1時間) 

 破壊光(統合済み)

 グラビトンボイス(統合済み)


レアスキル

 時空跳躍(自身の命を女神ティーリケに捧げる事により使用可能)


※女神ティーリケの眷属



 

 改めてダンジョン踏破からこっち、ステータスが異常だ。ぶっちゃけ、レベルが一つ上がると、数値が倍になっていく。

 もしこんなRPGが現世であったとしたら、販売直後から回収騒ぎ間違いなしだろう。


 ぶっ壊れと言えば、コンちゃんの能力もぶっ壊れと言える。んーいかんいかん、考えると頭がおかしくなりそうだ。


 取り敢えず足元にあった石を拾い、ドラゴンに投げてみる。

 これでも若い時は近所のストラックアウトでならしたものだ。キャッチボールする相手なんか居なかったもんな……。


 少しダークな気分になりつつも、投げた石ころは音速を超えドラゴン目掛けて飛んで行った。




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