第11話 メギドギガンテス
(……神域の獣。雷獣じゃ)
――――
――
――このダンジョン主の雷獣? 取り敢えず倒せた。
いきなりだな!って?
雷獣をどう倒したかは、今からお見せしようと思う。
――少し巻き戻り、ここは先程女騎士、猫耳、エルフの三人がゴブリンと戦っていた場所。
インテリジェンスウェポンとして自我を持つコンちゃんに対し。意味が解らない、と三人が[why?]なぜ?みたいに両手挙げていたその時。
俺とコンちゃんは別の事に意識を集中していた。
その存在は、先程結晶化までして灰となったドラゴンゾンビだ。
(そろそろじゃな)
『あぁ』
俺は自身が身に纏っていた天人の羽衣を徐にはずし、三人に向かって投げつける。
『三人とも、その中に入って出て来るなよ。それはかなりの防御力があるが、今から放つスキルは結構ヤバイ代物だからな』
「ど、どう言う事だ!」
女騎士のシェリーが何事かと喚いているが、目の前の出来事に口をつぐむ。
『言っただろ、こいつは死霊系のドラゴンだと。結晶を取った所で何度でも復活する。ほら』
俺の言った通り何も無かった空中に地面からガラス片が幾つも浮かび上がり、更にはそれらが合体し始める。
何度か試したが、この状態で攻撃してもなんの手応えもない。
だが先程と違うのは、今度は青ではなく、赤い結晶石だと言う事だ。
(やはりこいつも赤色か)
『漸くって感じだけどな』
(こいつの復活は何度目じゃったかの)
『んー、4・5回目じゃないか?』
そんなコンちゃんとの念話の最中でも三人はなにやらギャーギャー何か叫んでいる。
『なんでもいいが、そのマントから顔を出していると本当に首が飛ぶぞ。俺の戦いが見たければマントを被っていても見えるはずだ』
その間もドラゴンゾンビの復活はどんどん進み、遂には。
――グギャーーーーーーーーン!!
元の姿に戻った。
『これで最後のはずだよな』
(…………)
『どうした?』
(お前さん、先程からなにやらカッコつけてはおらぬか?)
『はい?』
(ダンジョンで生活しておった頃、と言うかこの者達と出会うまでなら「これで最後のはずだよね」とか、語尾がもう少しマイルドだったとおもうんじゃが……)
『……そ、そんな事はないぞ。そもそも彼奴等に我ら二人の念話は届くまいて』
(そんな事はない「よ」じゃな。それに悪化しとるぞ)
『……』(……)
『わぁーたよ!戻しますぅー、戻せばいいんでしょ戻せば!』
(うむ、そっちの方が見た目とギャップがあって良い感じじゃ)
『ギャップ萌えかよ!』
(それより、ほれ。馬鹿ゾンビがまたいつもの火の弾攻撃してきよったぞ)
『全く!なんで今そんな話ししたかな!コンちゃん!』
眼前に迫る火の玉を、今度は素手で受ける前にコンちゃん。棍棒を振りかざす――。
『雷獣ヌエ!俺に力を貸せ!』
「――グォオオオオオオオオオオオオオオ!!」
俺の雄たけびに応えるする様に、天から雷か一閃地面に突き刺さる。
(来よったぞ!今じゃ!)
今放てる一番威力がある技。
以前このドラゴンに、雷獣ヌエを仕留めたメギドギガンテスをお見舞いしたが、やはり結晶化の後復活しやがった。
その時復活した時の結晶の色が青。
ダンジョン内の死霊系との戦いで、最高で3回復活したモンスターが居た。
だがそいつは倒す毎に結晶の色が黄色→青色→赤色と変わり、最後には消滅したのだ。
だが問題は、死ぬ度に強くなるという所。どこのサイヤ人だって話だ。
メギドギガンテスは発動まで少々時間が掛かるのが難点だが、地上に居るドラゴンなんて空を舞っている時より数段遅い。
充分間に合う。
だが、その時思いもよらない事をした馬鹿がいた。
(カズオ!三馬鹿のうちの誰かがドラゴンにステータスチェックをしよったぞ!)
『な”!』
人にステータスチェックをされると言うのは本当に不快なもので、それは魔物にも共通の事だ。
現に俺はキングスライムにステータスチェックをしたばかりに、かなりしつこく追い回される羽目になったのだ。
あんな不快な物をドラゴンに向けるなんて、いくら透明マントを貸していても殺してと言っている様な物だ。
――グギャーーーーーーーーン!!
案の定、ドラゴンゾンビは突進方向を微妙に変え、俺の左後方に居る三人へ突進しだす。
『なんて馬鹿な事を!』
既にスキル発動中のコンちゃんにはこれ以上何かを頼む事は出来ない。
なら後は俺のスキルの中でどうにかしなければならないのだが。
レアスキルの時空跳躍?馬鹿を言っちゃいけない。命がけで何がどうなるか解らないスキルなんて使える訳がない。
ならどうするか。
こうする。
スキル有効範囲から逸れ、俺の横をすり抜けようとするドラゴンゾンビの片翼を右手で掴み上げる。
――グギャッ!
俺に掴まれたドラゴンは、そこでいきなりの急停車。
30メートルの巨大な生き物を、大きいとは言え、10分の一のサイズの俺が微動だにせず行動を阻害したのだ。
だが、まだまだそんな物では終わらない。
俺は掴んだ片翼を、コンちゃんの有効範囲へ投げ飛ばす。
巨大なドラゴンが転がるなんて見応えがあったが、今はそれ処では無い。
何回も何回も挑んでは撃退された恨みはここで晴らさせてもらう。
レベル20にして漸く可能になったスキル混合技、その威力、分子レベルで崩壊させてやるぜ!
『スキル!ライオットメギドギガンテス!!』
言葉と共に棍棒から緑色の膜がドラゴンを包む。
それと同時に緑の膜が小さく凝縮し始めると、その中で幾つもの爆発が生まれ、その爆発した破片を小さくも激しい光の稲光が衝突し更に激しく爆発を繰り返す。
次第に緑の膜の球体はビー玉程の大きさとなり、遂にはこの世から消滅して無くなった。
『ふぅ、なんともあっけない』
(まぁ復活が面倒なだけで、それさ無ければ素の殴り合いだけでもお主に勝てる訳もないのじゃがな)
その言葉俺はにもう一度溜息をつく。
そりゃ今の俺に勝てる存在なんてありはしないと思う。魔王が居たとしてもかつる自信も無きにしもあらずってところだ。
レベル?まぁ低いよ。20だし。
低いけど低いのはレベルだけで、他のステータスとかレベル1から一つレベルアップする毎に倍々増えていったんだ。
レベル1でHP150から始まったレベル上げも、今のレベルはたったの20。
レベル20だけど、HP、7千8百64万3千2百あるんだよ? MPも5千万超えてるし。
最初はそれが普通なのかなって思ってたけど、コンちゃんに言わせれば。
「それはあれだ。俺Tueeeeeee!て、やつだな」とか言ってたし。
だからと言って、俺強えー!!とか子供みたいな事言わないけども。
まさかこんな事になるなんて思わなかったと、コンちゃんも驚いてた。
ドラゴンを消滅させ、一息ついたその後。後方から声が上がる。
この声は女騎士さんだろう。
「マイマスター!いや、神よ!あぁもうマイ・エンジェルゴッドよ!」
天使か神かどっちだよ!と、ツッコミを入れる前に彼女の目を見て少し引いた。
そして色々なんとかしないといけないんだろうなと、少し胃が痛くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます