第10話 レベル3でダンジョン最下層
勝てそうな気がするとは思ったけど、今の俺には武器がない。何処かに武器転がってない?
勝てる方法を考えていたが、コンちゃんの意見は違うようで。
(お主、まさかアレと戦うつもりではないじゃろうな)
『そ、そのつもりだけど?普通スキルてのが奴より微妙に高いし、なんとかなるかなって』
(馬鹿者!お主はどう見ても近接型じゃ!あんな魔法特化の魔物と正面からやりあって勝てるはずもなかろう!)
『た、確かにそうだけど。でも俺も魔法使える!』
(脆弱な人間の姿にならなければならぬがな!いいか、兎に角逃げろ!)
『逃げろったって――』
その時、右の頬を何かが通り過ぎる。
――バシュッ!
『っつ!』
(どうした!)
一瞬痛みが走ったので、右の頬を触ると。
(血が出ているではないか!奴の魔法か!)
俺は走りながら後方を確認する。
ちょ、ちょちょちょ!なんかさっきよりあのスライムおっきくなってんすけど!?
そこで俺は少し焦る。今のアイツの攻撃が、もし右ではなく左だったら?
(おい!アイツでかくなってるぞ!他のスライムを吸収しとるのじゃ!!)
そう、この左肩に乗ってるコンちゃんの身体に穴が開いていたかもしれない……。
(どうした)
『いや、なんでもない。兎に角全力でにげる』
(お、おう)
奴の射線を軸をずらしながら左右にジグザグ走行を心がける。
またあんな攻撃されてコンちゃんに当たりでもしたらと思うと、焦りが増してくる。
(お、お主!もう少し真っ直ぐ走れんのか!)
俺の左肩で首に巻きつくコンちゃんだったが、構わずジグザグに走る。
目の前には先程転がって来た上に上がるスロープ。だがこれを上がるとドランゴンが待ち構えている。
(スロープの左じゃ!左!)
コンちゃんが叫ぶ。見たところ、そこは下りのスロープになっている。
『降りたらもっと魔物が強くなるんだろ!?降りたらまずいだろ!』
(しかし上はドラゴンじゃぞ!)
その通り、上に上がった所でドラゴンに丸焼きにされて終わりだろう。なら希望がまだある下の階層を目指した方が良いに決まっている。
そんな事は考えずとも判断出来る事なのに、いちいち考えてしまうのは、焦りからなのだろうか。
『わかった。じゃ左のスロープを降り――』
言い掛けたその時、足元にヌル気持ち良い感触が伝わる。
――つるりん♪
スライムを踏みつけてせいで、全力疾走の体勢が崩れる。
『うお』
事は一瞬だった。左に向かおうとすれば、右足は左に力を入れ、左足は左を向く。
もしその時、右足の下に、スライムが居たとしたら。
身体は倒れるが、勢いは右に向くのだ。
(うぎゃーーーー!)
体勢を崩し転がる最中少女だけは守ろうと、肩のコンちゃんを捕まえ、両手で抱え込む。
(我は問題ない!離せ!離せと言うに!)
こけた先にもスライムが居たらしく、それを腰で潰してしまった様で、身体の勢いが止まらない。
左のスロープどころか、右の上がりのスロープも越えていく。
超えた先に見えたのは、大きな穴だ。
(だ、だから離せ!アレに落ちる前に離せと!――うぎゃ!)
俺とコンちゃんは、一直線でその穴まで滑り込み。そのまま自由落下を体験した。
――――
――
どれほど気を失っていただろう。
それにここは?
(カズオ気が付いたか)
身体を起こそうと身をよじった時、念話が飛んできた。
(動くな!)
切羽詰ったその言い様に、ピクリと反応し身体をその姿勢でストップさせる。
『なに!?』
(さっきより状況がわるぅなっとる。今は息を殺してそこを動くな)
その言葉に目線だけを周囲に向けると、自分の位置が大きな岩陰に挟まっている事がわかる。
俺は眉を寄せ辺りの様子を伺うと。一階層とは違い、かなり広い空間なのが解る。
洞窟の中なのに何故そこまで広いのが解ったのか?それは天井が水晶なのかガラスなのかわからないが、一面それらに覆われ、全体を照らしているからだ。
しかも、ここが高台になっているのか、下を見れば林や、その間を川までもが流れていたのだ。
『ここはなんだ? 見たところモンスターぽいのも居なさそうだが?』
(それが問題なんじゃ。ダンジョンの下層にこんな自然豊かな場所が存在すると思うか?)
『他のダンジョンを知らないからなぁ。でもゲームで言えば途中の中継地点とかじゃないか?例えば冒険者がダンジョン攻略の休憩場所に使ってるとか』
(フン。そんな都合のいいものが在るのはお前さんが居た前の世界のゲームの中だけじゃ)
『じゃここは、コンちゃんはなんだって言うんだよ』
(……我が思うに、ここはダンジョンマスターの階層じゃ。ほれ、あの川の畔、少し大きな岩の在る辺り。見えるか?)
コンちゃんの言った場所は少し遠かったが、目がよくなってるのか、充分見えた。
充分見えたと言うか、見たくなかった。
そこには大きな角の生えた赤黒い牛の様な巨大な生き物が大きな斧を振り回している。
あれは知っている。ミノタウロスだ。
だが問題はそこじゃない。
何故ミノタウロスが斧を振り回しているのか。
それは自身の身を守る為に必死に振り回しているのだ。既に片腕はもげ、内臓もはみ出しているが、必死に斧を振り回している。
『……なんだよあれ』
ミノタウロスを圧倒する。いや、ただの食料にしているその相手。
(……神域の獣。雷獣じゃ)
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