第9話 魔法の使い方

(お主の固有スキルに人化とかあったじゃろ。それで人の姿になってみればよくはないか?)


『ぉおっ!その手があったか。流石は元世界樹!』


(今も世界樹じゃ!ほれ、とっとと人化してみせい)


『――スキル人化!』


 どうやらこちらは念話でスキル使用が可能な様だった。


 スキルを発動するとみるみる身体が小さくなり、今まで握っていた棍棒がだんだん大きくなる。


『ちょ、重っ』


(な”!レディに重いとか失礼な奴じゃな!我もお前のサイズに合わせば問題なかろう!)


 コンちゃんはそう言うと、俺のサイズに合わせ小さくなっていき。


 目の前には素っ裸で色白な長い金髪少女が現れた。


「へ?」


「驚く事はなかろう。我のスキルを使用しただけじゃ。にしても念話ではなく、こうやって喋るのも悪くないものじゃの」


 小さな金髪少女となったコンちゃんが、あられもない姿で伸びをする。


「こ、コンちゃん服。服は!?」


「そんな面倒なものはいらんぞ。それよりほれ、お主の人化は時間制限つきであろう?――(しかしカズオは人化すると青年の姿になるのか。それに昔見ていたよりも痩せたかの?)」


「ん?なに?」


「なんでもない、はようせい!(こやつ、自分も腰布一枚で素っ裸同然なのに気づいておらぬのか?恥ずかしい)」


「なんだよ」


「なんでもない!はようせい!」


「はいはい。なんだよまったく」



 スキルの横に(3分)とか書いてたしな。はやいとこブッパしときますか。



「よし、じゃいくよ。――ファイヤー!!」


 一度手のひらに熱量を感じると、次の瞬間右手から炎が舞い上がる。


「凄いなぁ魔法って。闘うのに剣なんかいらないんじゃない?」


 手に発現した炎に関心していると。


「それはそうじゃが、とっとと投げぬとお主の手が灰になるぞ?」


 え?


「あちっ!あっつ!――とりゃ!」


 少し焦ったが、手の炎は意思の通り前方へ放たれる。


「まぁ鈍くさいが及第点じゃな」


「さよでっか」――。





 俺は再び覚えたての魔法を前方に向かって放つ。


「ファイヤー!」


 今度は連続で。


「ファイヤー!ファイヤー!」


 実験から今まで4発のファイヤーを放ったが、MPの減り方は1発50程度。あと二回も放てばMPが枯渇する。


 その間にもサイズアップした様に見えるスライム達も何匹か始末していた。



「この程度の魔法だと、元の姿で踏みつぶした方が早そうだな」


「そうじゃなぁ、あっちの方がデカイからどうしてもそうなるな――って、なんかこっちに向かってくるぞ?」


 コンちゃんの指摘に、俺は前方に目を細める。

 しかし少しまだ見えずらい。暗いせいだろうか?


 そう思い、大きめのファイヤーを一発前方に放つ。


「ファイヤーー!!」


 見えた!


 洞窟の奥。ファイヤーの明かりの届いたそこには、大きな、それは大きな黒いスライムがぶよ~んとこちらを伺っていた。


 目測で6メートルはありそうだ。


「コンちゃん。あれってステータスも見れるの?」


「そりゃモンスターじゃしな。普通に見れる」


 その言葉に俺は少し離れた位置にいる巨大スライムのステータスを覗き見る。


「ステータスオープン」




名前 不明

年齢 不明

職業 1階層の主

種族 スライム

称号 キング

Lv 8

状態 興奮

HP 500・500

MP 1100・1100

魔法スキル ウォーターアロー・ウォーターウォール・ウォーターボム

通常スキル

 粘着3・怪力5・切断3・知能上昇

固有スキル

 無詠唱・行動鈍化デバフ

レアスキル

 なし


「種族がスライムで称号がキングって、キングスライムじゃないか。しかも今の俺よりステータスが高いな」


「そうじゃな、微妙にアイツの方が強そうじゃの」


「んじゃ少し下がろう」


 そう言ってコンちゃんの手を取り後方へ下がろうとしたその時。俺の手がギュッと身体ごと引き寄せられる。



――バシャッ!!


「な、なんだ!」


 凄い勢いで水が飛んできた。いや、凄い勢いなんてもんじゃない。

 フォトンレーザーでも照射されたかの様に、岩肌が水の勢いで裂けていた。


「あいつの攻撃水魔法じゃ!」


「なっ!?俺みたいに詠唱は!?」


「バカ者!魔物が詠唱なぞ必要とするはずないだろうが!」


「え、え、え、俺詠唱する為に人化までしたのに!?」


「スキルの違いだ!それよりどんどん放ってくるぞ!早くオークに戻れ!我も棍棒の姿に戻るぞ!」


 俺とコンちゃんは走りながらスキルを戻す。戻すと言うより、スキル使用を切ると言った方が適切だろう。


――だが、一向にスキルが切れた感じがしない。


「……ちょ、オークにもどらないんですけど」


「わ、我も棍棒に戻らん……おい、ステータスを見せろ!」


 金髪少女のコンちゃんが走りながらこちらを見つめる。


「何かわかった?」


「うむ、問題ない。あと5秒でお主の人化は解けるぞ」


「……5秒?」


 その時、突然メキメキいって身体が大きくなる。


「うガガガッ!」


「念話を使え念話を!」


『なんで急に戻ったんだ!?』


「どうやら3分間は解けぬようじゃ。ステータスを見ればカウントダウンしておったわ」


『て事はコンちゃん、一日その姿?』


「そうなるな」


『ちょ、危ないから!そんな小さな姿でダンジョンとか!』


「な、ならお主の肩にでも乗せてくれればよい」


 なんか顔を赤くしてそんな事を言われたら、断れない。てか最初からそうする積りだったし?


 オーク化を終えた俺はコンちゃんを肩に乗せ、出来る限りキングスライムから距離を取る。


 先程の水魔法が、キングスライムの射程ギリギリだったらしく。今は奴の攻撃が飛んでこないのが幸いだ。


 走りながら奴の倒し方を考える。


 コンちゃんが棍棒でない今、奴に対抗できる武器はない。魔法も人の姿にならなければ使用出来ないし、あと1発放てば終わりの魔法に意味はない。あんな魔法で殺せるともおもえなしな。



……あれ?これいきなり詰んだんじゃない?



 だが全然詰んでなどいなかった。キングスライムから距離を取る為に一目散に逃げた事が正解だった。


 なんせ逃げている間、何匹かスライムを踏み殺していた様で。





――ポーン。

(レベルが上がりました。ステータスが上昇しました。魔法が解放されます。新しい普通スキルを覚えました)






名前 ヤマダク・ズオー

年齢 不明

職業 不明

種族 オーク(進化種ユニーク種)

称号 なし

Lv 3

状態 女神ティーリケの呪い(重)(あと9,999.9ポイントで解除可能)

HP 600・600

MP 400・400


解放魔法 ファイヤー・ウォーター

装備 神樹棍


通常スキル

 怪力5・打撃5・切断2・粘着1・肉厚5・聴力倍化・視力倍化・瞬歩・脱走


固有スキル

 経験値変動取得(邪神眷属を一定数討伐でボーナス)

 人化:(3分:使用制限中) 


レアスキル

 時空跳躍(自身の命を女神ティーリケに捧げる事により使用可能)


※女神ティーリケの眷属





『ギリギリだけど勝てそうな気がする!?』



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