第7話 レベル1でドラゴン現る

(ほぅ、何事かと思えばステータスが更新されとるの)



名前 ヤマダク・ズオー

年齢 不明

職業 不明

種族 オーク(進化種ユニーク種)

称号 なし

Lv 1

状態 女神ティーリケの呪い(重)(あと10,000ポイントで解除可能)

HP 150・150

MP 100・100


通常スキル

 怪力1・打撃1・肉厚1・聴力倍化・視力倍化


固有スキル

 経験値変動取得(邪神眷属を一定数討伐でボーナス)

 人化:(3分) 


レアスキル

 時空跳躍(自身の命を女神ティーリケに捧げる事により使用可能)


※女神ティーリケの眷属





『更新てか、名前が元に戻っただけだけどな。しかも元の名前掠ってるだけっ感じで』


(しかしお主があの青年だったとはの。我も命を懸けた甲斐があったと言うものじゃ)



『え?命を懸けた?棍棒さんが?』


(その棍棒さんと言うのはどうにかならんのか?まぁいいけど)


『それよりコンちゃんが俺の命救ったってどういうこと?』


 それこそが世界樹が棍棒と成り果て、呪いを受けた理由だった。


(コンちゃん!?ま、まぁ可愛いからいいか。それでじゃな、お主の命を救ったのは我じゃ。あのままでは魂まで混沌に落ちかねんかったしの。それに我はお主の事を……っとそれはさておきじゃ。よう生き返ったの)


『……なんで』


(ん?)


『なんでイケメンとかじゃなくよりにもよってオークなんだ?』


(馬鹿を申すな、誰がお前をオークになぞ転生させるものか。だいたい我がしたのはお主の魂をこの世界に引き寄せる所までじゃ)


『な、なんだそれ。あ、もしかしてこの呪いって……』


(そうじゃろうな。人の魂を持つお主がオークになんぞ転生するはずがない。しからばその呪いがお主の姿を変えているのじゃろうて)


『て事はだよ?コンちゃんへの呪いって』


(察しがいいの、そうじゃ。世界樹として存在しとった我は、今やただの棍棒じゃ)



『可愛そうに……呪いでただの棒きれにされちゃっただなんて』


(棒きれちゃうわ!棍棒じゃ!)


『所で、俺もなんだけど、なんでコンちゃんは呪いくらってるの?』


(それはじゃな――)



――――

――


 要するに、ずっと覗いてた異世界人の俺に興味を持ったユグドラシルは、世界樹の力を自分だけの意思で俺を蘇らせた罪で、管理者の全女神達からの呪いを受けてしまったそうだ。

 今も次元の柱として世界樹の存在は感じるらしいのだが、本体とは完全に切り離され、完全無欠のただの棍棒になっているそうな。


(おいカズオ、そのなんじゃ。出来ればじゃぞ。無理にとはいわんが、我と共に呪いを解いていくっていうのはどうじゃ?そ、そのなんじゃ。悪い話ではないと思うんじゃがな。我はただの棍棒じゃが、元は世界樹よ。何かこう凄い事がそのうち出来る様になるかもしれんしの!どうじゃ!うんそれがいいぞ!)


 プルプル微妙に震えながら喋るコンちゃん。ちょっと可愛い。いや、棒なんだけど。


『何を言うかと思えば』


(……だ、ダメか?……そうか。なら我をここに置いて――)


『こっちからお願いしたいくらいだよ。いや、お願いだから俺とずっと一緒に居て欲しい』


 このコンちゃん、どう考えてもこの異世界でのストーリーテーラーでしょ!そんな人、もといそんな棍棒手放すわけないじゃん。


(ず、ずっと一緒、ずっと一緒、ずっと一緒)


『ん?コンちゃん?』



(お、おう!そうじゃな!仕方がないのでずっと一緒に居てやる!感謝せよ!あはははははははっ!)



『お、おう。あはははははははははっ!』



 なんか笑ってるので俺も一緒に笑っといた。さっき人として死んだばかりだったけど、なんか楽しかった。





――――

――


 一息ついた後、コンちゃんがこんな事を言い出した。




(先ずはそのゴミの様なレベルを上げる所からじゃな)



『……確かに。そもそもどうやってレベルって上げるの?』


(そりゃレベル上げとくれば魔物狩りじゃろ)


 その一言で俺の心に火が着いた。



――「グォオオオオオオオオオオ!!」



(ど、どうしたのじゃ急に念話を止めて生声で叫ぶとか!)


『いや、俺これでも昔はレベル上げのカズオちゃんて呼ばれててね。どのキャラ使ってもレベルマックスにしなかったキャラは居ないんだよ!』


(そう言えばそうじゃったな。最初何をやってるのかさっぱりじゃったが、ずっと見てたらわかったわ)


 成程。さっき魔法や剣を普通に使ってた世界ってゲームの話しかよ。あれ、そー言えば。


『……ねぇコンちゃん。ぶっちゃけ俺の事どんだけ見てたの?』


(ん?産まれた時からずっとじゃが?)


『そ、そうなんだ。じゃ、じゃさ、俺が高校生の時――』


(待てカズオ。上から何かが来るぞ!)


『え?』


 俺が空を見上げると、大きな鳥が急降下をして来ていた。


 その鳥がどんどん近づいて来る。


 どんどん、どんどん。


 どんどん、どんどん、どんどんって、デケーーーーーー!!



(カズオ!どこかに隠れるんじゃ!あれはドラゴンじゃ!レベル1のお前なんぞひとたまりも無いぞ!!はよー!)



『隠れるったって何処に!』



 俺は恐怖に脚が竦む。眼前に迫るそれはどう見ても空飛ぶ恐竜。


(あそこじゃ!あそこの洞穴ならお前でも入れるはずじゃ!)


 俺は竦む足を叩き、転がりながらも洞窟へなだれ込む。


(もっとじゃ!もっと奥に行かねば焼殺されるぞ!)


 焼殺される!? そんな物騒な等と考える間も無かった。


 洞窟の入り口に顔を突っ込んで来たドラゴンは、徐に口を開けると。



――グボァ。


 火の玉を吐き出してきた。


 やばいやばいやばいやばい!


 俺は必死に足を回転させ奥に転がり込む。


 幸い洞窟の奥は下に続くスロープになっており、転がる事で火の玉の軌道から逸れる事が出来たのだ。


『あ、あぶなぁ。あんなのが居るところでレベル上げとか無理だって!最初はスライムとかからでしょ!』


 俺は興奮冷めやらぬままコンちゃんへ念話を飛ばず。


(お前が急に咆えるからじゃろ!こっちが焦ったわい。とりあえず一度深呼吸じゃ)


 確かに俺のせいかも。


 そして一度深呼吸をする。


 すると、すっと心が冷静になる。なんか不思議な感じだ。





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