第6話 君の名は。ヤマダク・ズオー
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――
彼女?は元は世界樹として、この世界の根本たる世界の柱として存在していたそうで。その彼女の存在を管理運営していたのが複数の女神だったそうだ。
世界の柱と言うのは、言葉そのもので。彼女の存在自体がこの世界を支えていたと言っても過言ではないらしい。余りに自慢げに話していたが、世界を支える存在だとすれば、偉そうなのもうなずける。
そしてその運営者たる女神達は、世界樹が無かった時代にこの世界を支えた者達で、世界樹が育ってからはその世話係として存在していた。
いつしか意思を持つまでになった世界樹の彼女は、数万年生きる間、暇で暇でしかたがなかったそうな。
(いや、もう本当に地獄じゃぞ。生きてるのに動けぬのじゃぞ?意識があるのに喋る事しか許されるぬのじゃぞ?)
棍棒さんは余程の地獄だったのか、声がか細く震えていた。
この世界の柱として生きる彼女にある日一つの力が発芽する。
それが次元柱としての力。
世界柱とは格が違い、この世界と別の世界との境界線を保つための力だそうだ。
彼女の力の影響で俺がこの世界に来たのかとも思ったのだが、それはどうやら違った様で。
(我が支えた境界の世界は魔法とか剣とか普通に使っておったぞ?)
と言っていたので、全く別の世界との境界を支えていたのだろう。
(いや、それでな。余りにも暇じゃったんじゃが、その力でこの世界以外の世界も覗き見る事が出来る様になったんじゃ)
それは凄い。この世界を見渡せるだけでもピッ○ロ神様Ver並の力なのに、別の世界ともなると海○神並じゃないか。
それから彼女はその暇つぶしにとある世界の若者を追いかける様になったそうな。
体系はふとっちょだが、性格は常にポジティブ。
趣味は他者と違う面もあるが、それをもポジティブの材料にしていたそうな。
人に頼まれごとをされても、嫌な顔一つせずそれを受け。人に脅され様とも、その体格を生かし一歩踏み出す事でそれを躱していたそうな。
『そんな人が居たんだ。我慢強い人だったんですね』
(うむ、なかなかの好青年じゃった)
そこで気になった。過去形?そりゃ棍棒さんは長生きだから周りは皆先に死んじゃうだろう?と、考えたが。――いや違う。
『なにかその青年にあったんですか?』
(……)
その言葉に静かに頷く棍棒さん。頷いてるかどうかわからないけど、今の沈黙は多分そう言う事だ。
(彼はな、一度恋をしたんじゃ)
『恋、ですか』
(我もこんなじゃから恋など知らぬが、人にとっては大きな問題らしくての)
そうだね。人生を大きく揺るがす大問題だね。
『失恋したんですね。その彼』
(あぁ、そうじゃ。それも最悪のタイミングでな)
なんかそいつの事は他人事とは思えないな。
『その後彼は?』
(失恋の傷が深くての。死ぬま恋をせなんだ)
そうだよな……もう恋なんてしたくないよな。
『でもそれ以上心に傷を負う事無く死ねたのは良い事じゃないですか』
そう、それ以上恋する事がなければ。人を愛する事なんてしなければ何があろうと傷つく事もないんだ。
(じゃが、奴は他の人間に殺されよった)
『そんなまさか。人との関わりを絶てば他人に恨みを買う事なんてないのに!なんで!――あ』
俺は棍棒さんに声を荒げたが、途中で気が付く。
そう、俺がそうだった。俺は人を好きになる事は止めたが、人との接触を拒んだわけでは無い。社会人としてそれなりに生きたんだ。
自分の心の底のドロドロした物を放置して。
(奴はな、ずっと勘違いをして生きてしまったんじゃよ。そのせいで、最後は自分の配下の物にトイレ中に刺されてな)
ちょっと待て。トイレ中に刺されて死亡、だと!?
(しかも小ではなく、大の方の最中にだぞ!)
それ俺じゃないの!?
いや、残糞感がなかったから違和感なかったけど!それどう考えても俺だよね!
『なぁ、そいつの名前覚えてる?』
(あぁ、500年も前じゃが覚えてるとも)
500年前?やっぱり俺じゃない別の誰かか?
(ヤマダクズオ(山田稼頭央)だったかの)
『それクズじゃなくてカズオだから!!』
(な”!お前があのヤマダクズオーなのか!)
その時、全身から電気が流れる感覚が起こる。それも凄まじい激しさで全身を覆い、痛みでその場に崩れ落ちそうだ。
電撃が止み、プスプスと体中から煙が上がる中。電子音が流れる。
――ポン。
(名前が更新されました。名前:ヤマダク・ズオー)
『……なにそれ。氏名の分け方違うし』――ガクッ。そこで一旦俺の意識は途絶えたのだった。
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