第5話 お前も呪われてんじゃん
――気付けば薄暗く、鬱蒼とした森の中。
(おい、そこの化け物)
突然頭に少女の声が響く。
辺りをきょろきょろしていると。
(お前だお前、そこのデブ!お前だよ)
デブって言葉に過剰に反応してしまうのは、死ぬ前に聞いた言葉がデブ野郎だったからだろう。
俺はその場から立ち上がり、怒りを露わにする。
「グォオオオオオオオオオオオオッ!!」
そこにライオン以上の猛獣が居るかの様な咆哮が木霊する。
――ひぃ!!
その咆哮に驚き腰を抜かす。
(ぶははははははっ、なんだお前。自分の声にびびったのか!?ダッサ!超ダッサ。ププププーーー)
脳内で俺を馬鹿にする声に再び怒りの声を上げ。
「グォオオオオオオ!」
ってまてーーーーーーっ!!
「………ブホ」
あれ?
「ブホ、ブホホ」
心の中では私は山田ですって言ってんだけど、発する音が違う。
喉がおかしいのか?と、喉に手を充てて視線を落としたその時。
――うひっ!。
(ん?なんじゃお主。急に驚いた様な声を上げて)
驚くなんて話じゃない。戦慄と言ってもいい程の驚きを俺はした。
視界にあるはずの肌色の自分の腕や腹ではなかったのだ。
「ブ、ブホ!ブホホホホッ!」
(何を言ってるんだ?念話を使え念話を)
念話?念話ってなんだ。念じろって事か?
『お、俺の腕や腹が緑色なのに驚いてるんだよ!一体なんだこの身体は!』
(おぉ、やはり念話が通じるか)
『念話ってこの心の声みたいなやつか』
(そうじゃ。しかしそんな事も解らず念話を使いこなすとはの)
『そ、そんな事よりなんだんこの身体は! それにここはどこだ!で、もっかいなんだこの身体は!なんで緑色なんだ!気持ち悪い!』
(まてまて、そう慌てるな。先ずは落ち着け。な)
頭に響く声に促され、俺は一つ深呼吸をする。
深呼吸一つで落ち着くはずも無いと思っていたが、これが案外急激に高ぶった気持ちを抑え込めた。
(うむ。少しは落ち着いたか)
『状況は発狂ものなんだが奇妙に落ち着いたな』
(そうか。では先ず我を貴様の足元から持ち上げてくれ)
『足元?――これか?』
俺は自分の足元に転がる木の棒を持ち上げる。
見た感じは棍棒の様だ。
(先ずは自己紹介じゃな。我は世界樹。名をユグドラシルという)
『世界樹のユグドラシル?あの世界と次元とを支える木だとか、生命の源とか、生き返りの葉っぱとかの世界樹?』
(ほぉ~この時代にもまだ我の事を知る者が残って居ったとはな。して今度はお主の番じゃぞ)
『自己紹介な。俺の名は……あれ?俺の名前なんだったけ』
(なんじゃ。お主は名無しか)
『いや、名無しかと言われるとそうじゃ無い気もするし、そうな気もするな』
(ややこしい奴じゃな。ではお主のステータスを見てもよいか?)
『ステータス?あのゲームとかで自分の数字見るやつか?』
(なんじゃ?お主の国ではゲーム感覚で人のステータスを見るのか?いや、それも時代の流れかもしれぬな)
なんか棍棒さんが考え込んでいたが。ここは。
『見てもらえる?俺の数字』
(っと、そうじゃな。では失礼して――ステータスオープン)
その言葉と共に、何か言い知れぬ物が魂から抜き出される感覚がした。
いや、魂抜かれた事なんて無いんだけど、こう、心の底からヌルッと何かが出た感触。
名前 名無し
年齢 不明
職業 不明
種族 オーク(進化種ユニーク種)
称号 なし
Lv 1
状態 女神ティーリケの呪い(重)(あと10,000ポイントで解除可能)
HP 150・150
MP 100・100
通常スキル
怪力1・打撃1・肉厚1・聴力倍化・視力倍化
固有スキル
経験値変動取得(邪神眷属を一定数討伐でボーナス)
人化:(3分)
レアスキル
時空跳躍(使用条件未開放)
※女神ティーリケの眷属
(お主、なかなかに変わっておるな。固有スキルにレアスキルまで持っているとはの)
あ、見れたんだ。てか自分の能力数値化とか俺も見てみたいんだが。
『ユグドラシルさん。それって俺にも見せてくれる?』
(ん? 我のステータスか? まぁ別に構わんが期待するなよ、今はただの棍棒じゃからな)
あれ、今ユグドラシルさんが見てる俺のステータス見せてって言ったつもりなんだけど……でもまぁ俺も出来るかやってみるか。
相手を見ながら『ステータスオープン』――ブーン。
おぉなんか画面が開いた。
名前 神樹棍(ユグドラシル)
年齢 517周期
武器種 棍棒
素材 木
ランク 10・∞
内包MP MAX
状態 女神達の呪い(あと9,999.9で解除可能)
打撃力 ∞
スキル 形状変化(1日)
※裏ステータス
名前 世界樹・ユグドラシル
年齢 2万5517周期
職業 神
種族 神樹
状態:女神達の呪い(あと9,999.9で解除可能)
Lv ∞
HP ∞
MP ∞
スキル不明・固有スキル不明・レアスキル不明・神スキル不明
お互いがお互いのステータスを確認した後、何も言わず二人同時に画面を消す。
そしてお互いが一番気になる所を思わず口にする。
『…………呪われてますね』
(…………呪われておるな)
『……』(……)
お互いの時間が止まる。
(何故女神に呪われておるのじゃ?)
『何故女神達に呪われてんですか?』
『……』(……)
時間が止まる。
『517周期って何歳なんです?』
(年齢もなにも不明ばかりじゃな)
『……』
いちいち止まる時間を動かしたのは棍棒さんだった。
(……お主は何者なんじゃ?女神の眷属とあるが、呪いだけでは飽き足らず我を砕きに来た存在かなにかのか?)
俺は眉間にシワを寄せ、自身のステータスを見てみる。
自分のステータスは魂ぽい物が抜ける感覚はなく、簡単に開くことが出来た。
『最後の一文ですか。確かに女神ティーリケの眷属ってありますね……なんでしょこれ』
(わからぬのか?)
俺は取り敢えず今の状況に至った経緯を棍棒さんに話した。
――――
――
棍棒さんに一応話して正解だった様だ。
(ほう、ありえん話しではないな。では少し長くなるが、次は我の話を聞かせよう)
そう言って彼女?は自分の今に至るまでの話をしだした。
(今から約二万年前の事じゃ)
『まったっ!』
俺は彼女の話を最初から止めに入る。
そりゃ止めるさ。なんせこの人、二万年前から話そうとするんだぞ!
そんなの聞いてるだけで数年掛かるだろ!
『その話、出来ればかいつまんでお願いできます?20分くらいでまとまれば良い感じなんですけど』
(なんじゃせっかちじゃの。折角今から数年掛けて話してやろうと思っておったのに)
やっぱりか!
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