オルタナティブに祝福を
かつて偽物、
ああ、ごめんなさい。
その事を許して欲しいなんて言いません、だけど。
その少女は、泣きじゃくりながらその少年の手を握っていた。
自分を守って重傷を負った少年に、少女はボロボロと涙を流しながら罵倒し続ける。
その姿がいつかの友人達の姿と重なって、暁は少しだけ目を伏せた。
――最初から、似ていると思っていたのだ。
少し前に起こったとある事件でそれが正しいものだったと認識した上での今回の事件。
たまたま通りかかった自分のあの反応を、あの脳味噌が沸騰する様な怒りを思い出して、頭を抱えそうになった。
――どう考えても重ねている、この二人をあの二人に。
自分の目の前で無残に死んだあの二人に。
かつて、誰かの代用品である事を押し付けられていた自分が、誰かを代用品として扱うなんて。
そんな思いは持つべきではない、そんな感情を向けられていたあの虚しさを自分はよく知っているはずなのに。
それでも重ねずにはいられない。
重ねずにはいられないから、せめてこの二人だけでも、とそう思ってしまう。
――この手のひらは伽藍堂、大切なものを取り零した、血で汚れ穢れた手。
この手で、誰かの代わりに守る事を許してください。
エゴイストの悔恨 (了)
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