第38話:もうひとつの真相
いつしか、すっかり夜が明け
外は明るくなっていた。
門の外ではマスコミも取材合戦が
始まった。
何しろ、龍崎仁が殺されたと
発表されたのだ。
一時は経済界のドンと呼ばれ
総資産1000億・・・・
その男が内縁の息子を殺人ライブで
殺され、自身も屋敷で刺されて
死亡するというショッキングな
出来事に、報道も熱が入る。
屋敷のリビングでは、今、龍崎レンに
よる謎解きが行われていた。
自称、天才中学生探偵は、
真っ直ぐに容疑者を見据え、
「野上由衣!あなたが、黒木を
殺した犯人です。」
指を差された野上由衣は小さく
何度も首を振り、
「違います・・・私は・・・」
「あなたは、黒木と男と女の
関係にありますね。」
「な・・にを・・・」
由衣は、しどろもどろ。
おいおい、中学生が言うセリフか~。
「これは、オズから送られてきた
画像です。」
スマホを提示。
そこには、裸で抱き合う、由衣と
黒木の姿があった。
「どうして・・・これが・・・」
「オズの贈り物(プレゼント)ですよ。」
誰なんだオズって・・・
「これ、合成じゃないんだろうなぁ~。」
矢作。
「ええ、どうぞ。証拠に・・・」
レンは矢作に画像を渡した。
「う~む・・・」
田上も後ろから覗き込んだ。
「あなたは、黒木と結託し、
舞香を追い落とし、正妻の座を
射止めようとしていた。」
由衣は、視線を逸らせた。
「そして、邪魔なレイラを亡き
モノにしようと、黒木に命じ、
幡多を唆(そそのか)し焼身自殺で
レイラもろとも殺そうと
企(たくら)んだ。」
「そんな事・・・」
絞り出すような声だ。
「だが、龍崎仁にあなたと黒木の
間がバレそうになり、
急いで犯行に至ったワケです。」
「う~ン」矢作は唸った。
「ウソです。だって私には
旦那様の子供がいる。」
お腹を触り、反論。
「ええ、ですから、あなたに
とって黒木は邪魔になった。」
「それで、殺したと・・・」
田上は、肩をすくめた。
「殺してなんかいません。」
由衣。
「あなたは、4階に行っていた。
黒木の転落する直前に・・・・」
レン。
「違う。私が行った時は、もう黒木は
転落した後だったんです。」
「ほ~、」と矢作。
「4階に行っていた事は認めるンですね。」
「それは・・・」由衣も言い淀んだ。
「何故です。」田上。「どうして
あんな夜中に4階へ・・・」
「呼び出されたンです。」
「誰にです。」矢作。
「それは・・、オズ・・に・・」
「オズ・・・?」全員が聞き返した。
いったい、何なんだ。
このオズって・・・?
「呼び出されたとしても・・・
あんな夜中に出ていきますか。
普通・・・?」
「ですから・・、脅迫されて・
・・・」
「脅迫・・・、」田上。
「そうです。オズから夜中に連絡があって、
この画像をネットに流されたく
なければ、今すぐ屋敷の4階に来いと・・・・」
「それで、行った時は、もう・・
・・?」
「はい・・、本当です。私は、
黒木を殺してません。」
「だが・・」
レンは由衣を睨み付け、
「レイラは・・・いや、榊ルナは
、あなたが殺したんだ。」
「違います・・・あれは・・・」
「全部、黒木のせいだと言うンですか。」
レンは追い込んでいった。
「わたしは・・・ただ・・・・」
「あの焼身自殺に巻き込まれて、
一人の少女が亡くなりました。」
榊ルナ・・。
あたしの事・・・
「彼女は、自分の不遇に立ち
向かって生きてきたンだ。
これから無限の可能性が夢が
あったんだ。」
レンは泣きそうになりながら、
「その未来を・・・
その夢を全部、ぶち壊した・・・
あんたたちが・・・
絶対に許さない。」
「う・・」由衣は小さく呻いた。
「オレは、あんたたちを許さない。
悪(あ)しき魂に報(むく)いを・・・!!
必ず報いを受けさせてやる。」
半分、泣きながら由衣を問い詰めた。
「違う。私じゃない・・・
私は関係ない・・」
由衣も泣きながら弁解。
「う~ん・・・」
矢作と田上は、由衣を宥(なだ)めるように、
「詳しい事は署で・・・」
と言った。
まだレンの怒りは収まらないようだ。
身体がかすかに震えていた。
彼は、マジで龍崎レイラを愛していたのだろう。
その事はよくわかった。
絶対に許さない・・・・
そう、彼は、罪を被せる事で由衣を断罪した。
恐ろしいまでの執念で・・・・
事件から2日が経った。
明日は、龍崎仁の葬儀だ。
少しは、落ち着きを取り戻した。
由衣はまだ黒木殺害は否認しているらしい。
だが、焼身自殺の示唆に関しては
黙秘していると言う。
その間、シオンが発見された。
耳を切断しただけで生きてはいたが、
精神に異常を来たし、病院へ運び込まれた。
オズの正体について事情を聞き
たかった警察だが、とても聴取に
応じられるような状態ではない
らしい。
やたらと悲鳴や奇声を上げ、
かなり精神を病んでいるようだ。
ミラも見舞いに行ったが、あまりの
状態に声も出なかったようだ。
あたしも久しぶりに地下の
ピアノを弾こうとエレベーターに乗った。
地下に降りると、誰かがピアノを弾いていた。
ショパン、別れの曲だ。
美しい旋律。柔らかなタッチ。
誰かと思ったら、光輝だった。
あたしが地下室へ入ると、演奏していた光輝が手を止め、
ゆっくりと振り返った。
「よぉ・・・、遅いぞ。」
そうだな・・・
あたしは、ずっと考えていた・
・・・・
事件の事を・・・
そして辿り着いた結論が・・・・
「光輝・・・」久しぶりに声に出した。ン、と彼は応じた。
「あんただろ。黒木を殺したのは・・・!!」
「フフ・・・」
光輝は鼻で笑った。
「あんたなら・・・
出来たはずだ。黒木を殺す事が
・・・!!」
これが、あたしの出した答えだ。
「ふ~ン・・・」
光輝は面白そうに笑った。
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