第37話:真相
外が明るくなってきた。
屋敷の中は警察関係者でごった返している。
リビングでは中学生の講義が続いていた。
空気を読まない少年探偵さんよ。
この状況で真相がわかったって言うのか。
レンは、ゆっくりリビングの中の
観衆を見回し、余裕の笑みを浮かべ、
「フフ・・・犯人なんか、最初っから、わかってるさ。けど・・」
けど、何だ。
「証拠がないと捕まえられないだろ。」
確かにな・・・
「そこで、まず、この事件の
動機から紐解(ひもと)いて
みましょう。」
フンと、矢作は鼻で笑った。
「龍崎仁を殺したい人は何人か、いますね。」
光輝を見た。
ミラは露骨に嫌な顔をした。
「けど・・、殺されて困る人が
います。」
麻生リナか・・・。
一斉にリナに視線が集まった。
リナは、憔悴しきっているようだ。
無理もない手に入ると思った
大金がポロリと滑り落ちたンだ。
ま、ご愁傷様ってヤツか。
「では、次に何故、この時を
狙って犯行に及んだンでしょうか。」
え・・・、
「ああ、確かに・・」
田上。「警官が見張ってます
からね。容疑者が絞られる。」
「そうです。明らかに不利でしょう。しかし犯人は龍崎 仁殺害を急ぐ必要があったとしたら・・」
どうして急ぐ必要が・・・
あ、そうか。結婚か。
「結婚・・?」
みいながすっ頓狂な声を上げた。
「そうです。よくわかりました」
レンに指を差され、みいなは
ご満悦。
なるほど・・、麻生リナか・・
「このまま龍崎仁が存命で、リナと結婚されたら、困りますよね~」
ミラを見つめた。
「何よ。あたしがやったって言うの」
ミラも反論した。
「いえ、別に・・・」
続いて野上由衣を見た。
「え、私じゃありません・・・」
ん、ちょっと待て・・・
野上由衣・・・。
彼女は確か、黒木が転落した後、階段から降りてきた。
彼女の部屋は一階のはず・・・何で階段で・・・・
「まぁ、いいでしょう。」
レンは余裕の笑みを浮かべた。
「犯人は、龍崎仁を殺し、それを舞香のせいにしようと
企(くわだ)てました。」
う~ン、ま、そうだろうな・・
・・・。
この頃には、矢作もリビングにいる全員がレンの講義の聴講生になっていた。
恐るべし中学生。
「実は、もう一つ、犯人は仁殺害を急ぐ必要があったからです。」
レンの講義は続く。
「何でよ・・」ミラ。
「レイラを殺害しようとした
真相が明らかにされそうだからです」
「レイラを・・・」
一斉に、あたしに注目が集まった。
なンなんだ。
いったい・・・
「バスでの焼身自殺の件か・・」
矢作が不貞腐れた顔で訊いた。
「ええ・・・、その実行犯を
唆(そそのか)し犯行に導いた
のが・・・、黒木だったと
したら・・・・?」
え・・・
何で・・・・?
「実行犯は、余命幾ばくもなく
焼身自殺を企(くわだ)てました」
「ええ、そうですね・・・」
と田上がメモを見ながら応えた。
「被疑者死亡のまま書類送検されたワケですが・・・
実行犯の幡多には別れた妻と
娘さんがいたんです。」
おいおい、何でそんな事を知ってるンだ。
お前が・・・・
「どうして、それを・・・」
田上。
「オズが教えてくれました。」
オズが・・・?
「お前に・・・」矢作。
「ええ、そして・・その娘とは・
・・」
リビングをグルリと見回した。
「あたしじゃないわよ。」
みいなが手をブンブン振った。
「ええ、わかってますよ。ねぇ、武藤サクラ・・さん。」
え・・・?
サクラ・・・
レンは笑顔で指名だ。
おいおい、重要な発言だぜ。
冗談じゃすまない。
「何を言ってるんですか・・・」
サクラは、うつ向いて視線を
そらせた。
「幡多は、借金を残し、妻の元を
飛び出し、ホームレスになった。
そんな彼が、不治の病にかかり、生き甲斐もなくなった。そんな時、黒木が唆(そそのか)したンですよ。
レイラを巻き添えに死んでくれ
たら、遺族の・・・、
サクラに金を渡すってね。」
「な、バカな事を言わないで
下さい・・・。」サクラ。
「そんな甘い言葉に乗って幡多はバスで焼身自殺をしてしまった。龍崎仁は、その事件を詳しく調査を始めた。
そうなれば、やがて武藤サクラが幡多の娘だと発覚してしまう。だから、早く死んでほしかった」
「違います・・・私は・・・」
だんだん声が小さくなった。
「そして、黒木は、あなたに今夜、仁の部屋の鍵を開けとけと脅迫した。」
「そうあなたが・・・」
ミラが立ちあがった。
「私は、ただ・・・」
「わかってますよ。鍵を開けただけなんでしょ。犯行を行ったのは
、黒木でしょう。」
「な・・・」矢作。
皆、驚きの表情。
何なんだ。
こいつは・・・
いったいどこまで真相を・・・?
「黒木は、竜崎仁を殺し、その
凶器を持って舞香の部屋を訪れた。」
ママ母に罪をなすりつけようとしてか・・・・
「う~ン、そして舞香さんに毒を飲ませ、自殺にみせかけようとしたってワケか・・・」
矢作は腕を組み、椅子の背もたれに身体を預けた。。
「ええ・・・」
「じゃぁ、何で黒木は死んだの
・・・?」ミラ。
ごもっともだ。
「自殺・・・」
田上はポツリと言った。
「二人を殺したまでは、良かったが、罪の重さに耐えきれず・・」
マジか・・・
あの黒木が・・・・
「そんなワケないじゃん。ねぇ、由衣。」
今度は野上由衣を見た。
「え・・?」
由衣も急に振られ驚いた。
「あなたと黒木がレイラ殺害を
示唆したンですよね。」
と言って、指を差した。
顔もいつもと違いシリアスだ。
「野上由衣・・・!!
あなたが、黒木を殺した真犯人だ。」
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