第34話:惨劇の一夜

 その夜は客室に刑事たちも泊まり込んだ。

 外には警官が立番。厳重警備だ。

 しかし惨劇の幕は開かれようとしていた。夜中、矢作の元に着信音。画面には非通知とあった。


「もしもし❓」


《やぁ、矢作警部さん。大変ですね。泊まり込みですか》

 機械で声が異常に高い。


「フン、心配してくれるなら、こんな時間に電話してくるなよ」

《ケッケケェ…、冷たいな。そんなんじゃ、取って置きの情報教えてあげないよ》


「フ…、誰なんだ。あんた」

《ボクですか。そう、オズノ セイヤとでも言っておきましょう》

「オズ・・・またあんたか・・・」

<ええ・・・、今夜は、何か不吉な予感がするンですよ。>

「何だ。占い師にでも転向したのか。イタズラなら、切るぞ。」

<あ~ぁ・・・、せっかくのチャンスなのに・・・>

「いいか、今日は一日、ほっつき歩いて、クタクタなんだ。お前のイタズラに付き合ってられね~ンだよ。」

<そう言わず、もうじきに処刑タイムのお時間だから・・・。>

「もう、いいか。何度も言わすな。付き合ってるヒマはね~ンだ。」

<いいでしょう、後で後悔しますよ。>

「楽しみに待ってるよ。」そう言って切った。

ふ~と大きく息をつくと、隣の田上が、

「誰だったんです。」

「ん、イタズラだ。」

「そうですか・・あ、すみません。ボク何か、飲み物でも貰ってきます。

これ、どうぞ。」とコップに入ったお茶らしきモノを手渡した。

「ああ・・・」一気に飲んだ。田上は廊下へ出ていった。

どのくらい経ったか、気付くと寝ていた。

その時、

うっわ~ーーーーと言う男の絶叫が聞こえた。

ハッとして起きると、隣の田上が、

「何ですか・・。今の・・」天井を見上げた。確かに上の方から聞こえた。

「さぁな・・・」矢作は寝惚け眼(まなこ)で部屋を出た。足元はおぼつかない。

そこに、ミラと家政婦の武藤サクラが部屋を出てきた。

「何です。今の・・・」サクラ。

「さぁ・・・、上から聞こえたようですが・・・」

「何階・・」ミラ。

「わかりません。」サクラ。

あたしも遅れて部屋を出た。いったい何時なンだ。まったくこんな真夜中に人騒がせなヤツだ。レンも部屋から出てきた。

「誰・・今の・・・」目を擦って聞いた。

「さぁ・・・黒木さんかしら・・・」武藤サクラ。

確かに大人の男の声だったから、黒木か、光輝。あとは、泊まり込みの刑事たちくらいしか思い当たらない。まさか、当主・仁って事はないだろう。

大きなサッシを開け、庭に出てみると、誰かがうつ向きに倒れていた。

「誰かが・・・」サクラは、そう言ったきり絶句。

黒木だ。しかも状況からして上から落ちたのか。

矢作が近づき、脈を取った。だが、しばらくして首を振った。

黒木が死んだ。なンで・・・・?

その時、階段からが家政婦の野上由衣が降りてきた。

どうして、上から・・・と思ったが、ドンドンと言うドアを叩く音と、

「仁くん、仁く~ーーん。」という麻生リナの声が聞こえた。

かなり声を張り上げていた。

矢作は、

「どうした・・・」

中から鍵が・・・・

「鍵・・・」

矢作たちが何とかドアをこじ開け、中に入った。

う・・一瞬、全員の目が釘付けになった。

マジか・・・

そこには、ナイフで刺された龍崎 仁が倒れていた。

血塗れの当主。女性たちの悲鳴。もうパニックだ。

外じゃ、警官たちが黒木の遺体をどうするかで、相談中だって言うのに、さらに遺体が一つ増えたんだ。

それも、この屋敷の当主・・・資産1000億だぜ。

「仁く~ン。」麻生リナが泣きついた。そりゃぁ、泣きたいだろ。

やっと手に入れた遺産相続の座なんだ。結婚できれば数百億って額が懐に入る。それが、一瞬にしてパーだ。泣いても泣ききれないだろう。

「やったね。」レンが場違いな明るい声をあげた。

何がやったんだ。お前の頭の中の方がやらかしたンだろ。


「この殺人事件、天才中学生探偵・龍崎レンがいてみせる❗」

 人差し指を天に向けポーズも鮮やかに、啖呵を切った。

 おいおい、お前はいつから天才探偵だ。

メガネでも掛けて少年探偵団でも作ってろ。















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