第32話:野上由衣

 矢作たちの元にもシオンの家に生首が届けられた事が告げられた。

 さらに、シオンの処刑の模様がネットでライブ中継され、事件は、典型的な劇場型犯罪の様相を呈して来た。

 田上は呆れたように呟いた。

「この事件…… いったい、どうなっちゃうンでしょうか」

「フン、知るか。オズに聞いてくれよ」

 矢作は不機嫌だ。

「オズか……誰なんでしょうか。  

 オズって……」

「それが、わかりゃぁ今ごろ捕まえにいってるよ」

「そりゃァ…、そうなんですが……」

 言葉を濁した。


 屋敷ではもう一つの大きな爆弾が炸裂した。ママ母を部屋へ運んだ黒木や家政婦らだったが、家政婦の野上由衣は手伝おうとはしなかった。

 見かねたミラが注意した。

「由衣…… あなた、何を遊んでいるの」

「別に、私は介護師じゃないわ。みいなさんに任せておけばいいでしょ」

「何よ。その言い草は……」

 みいなもハラハラして二人を見ている。


「フン、いつまでも、あなた方の言いなりになってると思ったら、大間違いよ」

「何ですってェ……」

「シオンも死んだ事だし、もうあなた方に大きな顔をされる覚えはないわ」


「ふざけた事を… ケンカを売るつもり」

「ええ、何年、あたしが、屈辱に耐えてきたか。わかって❓」

「知らないわ。何なの。も~、出ていきなさい。ここは、私の屋敷よ」

「フン、あなたの…… 

 そんなワケないでしょ」

「な……」


「良いこと、これからは、あなたたちの勝手にはさせない」

「何を言ってるか。自分でわかってるの。」

「もちろん…、あなたのお母さんは、ただの内縁の妻…… そして、これからは、私が、本妻になるわ」

「バカな…… 何を言ってるの。気でもおかしくなった」

「いいえ、至って正気よ。なぜなら……」

 何だ。なぜなら……


「私のお腹の中には赤ちゃんがいるの」

 え~ーーーマジか。

「何ですって…… ウソよ。そんなの」

「ウソじゃないわ。本当よ。3ヶ月だったわ。良いこと、あのリナとか、言う小娘も、あんたのお母さんも、全員、この屋敷から追い出してやるから」


「くゥ…やれるモンならやってみなさい。」

 お~お~、女性二人の醜い争いだね。

 だが、さらに全面戦争が拡大していくようだ。
























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