第27話:パラダイス・ナイト
新宿、歌舞伎町。
パラダイス・ナイトはすぐに見つかった。
矢作たちが入っていくと、店長らしきおネエが、
「あ~ら、ワイルド系じゃな~い。」
とウインクをしてきた。
矢作は、困惑気味に、
「悪いが・・・遊びに来た訳じゃない。」
手帳を提示した。
「ハハ・・おネエか・・・」
田上は苦笑い。
店長は、カウンターを拭きながら、
「フン、何の用だい・・・
まだ開店前なんだけど・・・」
「高村泉・・・みやびって子に
会いたいンだが・・・」
「みやびちゃんね~・・・。
どうする会う?」
と矢作の後ろに視線を向けた。
振り返ると、美女が立っていた。
オスカー系の美女だ。ただし・・・
「刑事が何か用・・・」声は低かった。
おネエだ。残念な事に・・・
「みやびさんですか。」
田上は目を丸くしていた。
みやびは、無言でうなずいた。
「石塚セイヤの事を聴きたくてね。」
矢作の問いに、顔色が曇った。
「オズ・・・?」みやびは眉をひそめた。
「ええ、オズノ セイヤからの紹介ですよ。」
「そう・・・、」と言って、ほんの少し頭を下げた。
「高村みやびは・・・あたしの姉の名前・・・」
「え・・?」田上は唖然。
「なるほど・・、世の中狭いモンですな。」
矢作は、つくづくそう思った。
カウンターに座り、事情を聴くことになった。
「悪いけど・・開店前なんで・・・」
店長がウーロン茶を出した。
「お構い無く・・・・」矢作。
「あの・・・高村みやびさんと言うのは・・・」
田上。
「5年前、オズの事件で亡くなったっていう・・・」
矢作。
「ええ・・・」
「あまり思い出したくないでしょうが・・・宜しいでしょうか。」田上。
「何でしょう。」
「事件は5年前・・・みやびさんは
兼ねてより親しかった石塚セイヤに
誘われ、友人の部屋へ行った。
そこで、セイヤに乱暴され、
みやびさんは、手首を切って
亡くなってしまった・・・。」
高村 泉は険しい顔で吐き捨てるように、
「フン、まだ警察はそんな事を・・・」
「すみません・・・何分、先ほど事件を
知った次第で・・・・」田上。
「それは、シオンたちの作った
シナリオでしょ。」と泉。
「なるほど・・・泉さんは、警察とは
違う見解を持っているンですね。」
「ええ・・・まず、石塚セイヤは、
姉に・・・雅に乱暴なんかしません。」
「はぁ・・、まぁ・・
そうかもしれませんが・・・」田上。
「信じないかもしれませんが、
絶対に乱暴なんか出来ないンです。」
「いや、そう信じたいのは、
そうなんでしょうが・・・・」
矢作も苦笑い。
「あの・・・調書によると・・・
みやびさんの体内から、
石塚セイヤの体液が
見つかったと・・・・」田上
「フン、下らない・・・」
高村泉は、どうにも納得出来ないようだ。
はぁ・・田上は恐縮。
「いい、シオンたちのシナリオは、こう・・セイヤが姉を誘い、部屋で乱暴し、自殺を計ったので、怖くなり、シオンたちに相談・・・その後、酒を飲み、泥酔した状態でシオンの車を運転し事故に遭った。」
「ええ・・・まぁ・・・掻い摘まんで言うと、そういった具合でしょう。」
「そして、その証拠が姉の体内に残ったセイヤの体液・・・・だから、セイヤが乱暴した・・・」
「ええ、そうですね・・・調書によれば・・・・」
「でも・・・セイヤは絶対に乱暴なんかしない・・・出来ないの。」
「はぁ・・・しかし・・・そう断言は・・・・」
「いい、何度でも言うわ。絶対に、で・き・な・い!・・・」
「でも・・絶対は・・・」田上も苦笑い。
「ゲイなのよ。」
「え・・・?」
「石塚セイヤはゲイなの。」
「まさか・・・・」矢作。
「いいえ、ゲイなのに、女性に乱暴するはずがないでしょ。なのに警察は、体液の一件でセイヤをレイプ犯だと決めつけた。」
「でも・・・実際、体液が・・・」田上。
「スポイトで注入したって事ですか・・・」矢作が深刻な顔で、
「そ、恐らくシオンたちが、やらせたンでしょ。」
「なるほど・・、シオンやロックたちが雅さんを拉致し、乱暴を働いた・・だが、自殺を計ってしまったため、偽装工作をし、石塚セイヤに罪をなすりつけたって事ですか。」
「ええ・そう、でも警察も検察も全て龍崎のシナリオ通りに捜査を進めた」
「なるほど・・・それで、被疑者死亡で書類送検・・・・」
「姉は、龍崎光輝と付き合っていたのよ。」
「はぁ・・光輝さん・・・」
「龍崎家の長男ですね。」
「ええ・・・、なのにシオンが何度も告白(こく)って来て、断り続けてたら、あんな事件に・・・」
「なるほど・・・光輝に対する嫉妬から雅さんに乱暴を・・・」
「ええ、わかった・。だから姉はシオンたちに殺されたようなモノなの。」
矢作たちは、はぁ・・・と応えるしかなかった。
「ん~・・・」矢作は唸った。「そうなると・・・泉さんにもロックたちを殺す動機があるわけですね・・・」
「矢作さん・・・」田上は、嗜めるように、「ストレート過ぎますよ・・」
「フン、そうね・・・」
「昨夜は、どちらに・・・・」
「ここじゃないの・・・」
「なるほど・・こちらで働いていた。そうですか・・・」店長に聞いた。
「ええ、何しろウチのナンバーワンですからね。彼女が、いないと売り上げ激減よ。」
「ふ~ン、なるほど、ねぇ・・・」
「ありがとう。また今度寄らせてもらうよ。」矢作は立ちあがった。田上も軽く頭を下げ従った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます