第25話:光輝・02

 石塚セイヤは、優しそうで

キレイな顔立ちのイケメンだ。


 ドラムじゃなく、メインボーカルを

任せればいいのに・・・

 だが、ビジュアル系バンド・ オズはシオンのバンドだ。

 彼が中心でなければならない。


 矢作たちは都心へ戻る車の中。


 田上は勘弁してほしいと言う顔で、

「石塚セイヤの事なんか調べて、

どうするンですか・・・」

「るっせ~な・・・」

 矢作は、そっぽを向き応えた。


「あ、シオンの捜索願いが

届けられたようです。」


「フン、ママ母か・・・」

「でしょうね。これで、シオンが

殺されたら、オズは・・・」


「呪われたバンドだな・・・」


「ええ・・・、そうならない事を

願うだけですよ・・・」


 あたしは、サンドイッチ片手に

地下室へエスケープ。


 これ以上、ママ母たちと麻生

リナの痴話喧嘩に付き合ってられない。


 あたしには、ピアノがある。

 ピアノを弾いている時だけは、

嫌な事も忘れて没頭出来る。


 一通り演奏が終わると、光輝は

腕を組み、う~ンと唸った。


 どうなんだ。あたしの演奏は・

・・


「フフ、光輝の手解(てほど)きも

受けるかい。」とレン。


 え・・、光輝も出来るのピアノ

・・・


「彼は、プロ級だよ。レイラも

彼から教わっていたんだ。」

 な・・・、だったら、すぐに

あたしがレイラじゃないって

わかったはずだ。


 素人には区別がつかないだろう

が、レイラとあたしじゃ、全く

演奏が違う。


 あたしのは、全くの独学で

基本も何も教わっていない。


 だから譜面も読めないし、耳で

聴いた演奏を自分の解釈で弾いて

いるだけだ。


 これまでは、弾けるだけで

楽しかった。

 しかしこれからは、レイラの

演奏に近づける必要があった。


「オレは・・・」

 光輝が考えた末、

「お前の演奏をとやかく言える

立場じゃない。」 


「立場って・・・」レン。

「ボクだって、立場なんかないさ。」

 

 光輝はうつ向いて考えていた。

「高村 雅(みやび)の事・・

・」

 レンの言葉に光輝の頬が引き

つった。


「雅も教え子だったから、あんな

事になったって言うの。」

 レンは、いつになくマジモードだ。


「別に・・・」

「どれだけ、悲しんだら・・・雅は帰ってくるの。」

 レンの言葉が突き刺さる。


「どれだけ、引きこもれば、雅は生き返るの。」

「わかってるさ。だから、戦線復帰したンだ。」


「だったら、前を見ろよ。

レイラを守れるのはオレたちだけだ。」

 レンがこんなに感情をむき

出しにした事があっただろうか。


 いつも飄々(ひょうひょう)と

して、とらえどころがない

美少年が、怒りを露(あらわ)にした。


「誰が仕組んだにしろ。もう、

レイラを危険な目に合わす事は

出来ない。

光輝の力が必要なんだ。」


 何だ・・・どういう事・・・

仕組んだって、何を・・・

誰が・・・


 何の事・・・一瞬にして

あたしの頭の中を駆け巡った。


 レンは尚も続けた。

「桐山の代わりは、あんたしか、いないんだ。」


 桐山・・・そう、これまで

あたしを支えてくれた桐山が

あたしの前から消えた。


 事件は、まだ始まったばかり・

・・・


 いったい誰が敵で、誰が

味方なのか・・・・


















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