第23話:石塚セイヤ
「何~ーー❗石塚が死んでいた~。」矢作は驚愕の声を上げた。
はい・・・と田上。
「5年前の夏に・・・事故で・・・」
矢作たち刑事らは、元バンド・オズのドラマー石塚の実家を目指して車を走らせていた。
その途中に入った情報だ。田上はインカムで警視庁のデータベースから情報を受けたようだ。
5年前の夏・・・いったい何があったんだ・・・・
石塚の実家は都下の田無にあった。古い民家が並んでいた。
石塚の母親はまだ50代だと思われるが、かなり老けて見えた。
やはり、一人息子のセイヤの死が重くのし掛かっているのだろう。
テーブルを挟んで矢作たちは母親から事情を聴いた。
「そうですか・・・バンドの人が・・・」
「ええ・・・、石塚セイヤさんが亡くなったのは、5年前の夏だったそうで・・・」
「はい・・・、あの夏の事は忘れる事が出来ません・・・」
「事故で亡くなったと・・・」
「違います・・・あの子は・・、あの子は・・・」段々声が小さくなった。
「5年前、いったい何があったンですか。」
「あの夏の・・・7月31日の深夜・・・この電話が鳴りました。」
プッシュホン式の固定電話だ。田上は、はいと促すと、
「早口で、私に・・大変な事をしてしまったと・・・」
「大変な事・・・何ですか。」矢作が額に手をやり、
「それが・・・泣き声で・・・すぐに切れてしまいました・・・」
「何があったんでしょうか・・・・」
「実は・・・暴行事件を起こしまして・・・」
「暴行・・・」
「女の人を・・・・」
「なるほど・・・」
「その女の人が・・・自殺を図ったと・・・」
「自殺ですか・・・」
「それで・・・お酒を飲ンで・・・」
「事故で・・・」
「はい・・・人の車で・・・」
「龍崎シオンの車ですか。」
「はい・・・そうです。夜中に乗って、そのまま・・・」
「なるほど・・・」心痛な面持ちだ。
「でも・・・あの子は・・・女の人を襲ったり出来ないんですよ・・・」
「はぁ・・・」
「絶対に・・・あの子じゃないンです。なのに・・・」
「事件は、うやむやにされた・・・」矢作。
「そうです。何度も弁護士さんに頼んだンですが、警察は、全く調べてくれなくて・・・」
「そうですか・・・龍崎家ですからね・・相手は・・・」田上。
はぁ・・と、母は力なくうな垂(だ)れた。
「申し訳ありませんが・・自殺した女性の名前を聞かせてもらえますか。」
矢作の言葉に、少しだけ視線を上げ、
「ええ・・高村みやびさんとおっしゃる方です。」
「高村 みやびさん・・・ですね。」はいと小さく頷いた。
「わかりました・セイヤさんの件も合わせて、オレたちが何とかします。」
え・・っと田上。
「本当ですか。刑事さん・・」母は顔を上げた。その言葉に矢作は頷いた。
「そ、矢作さん・・・」田上は渋い顔。
車へ引き返すと、田上は、
「無理ですって・・・石塚の母親に期待もたせても・・・」
「いいか・・・この事件・・・全ては龍崎家が絡んでいる。」
「だから・・・無理なんじゃないですか・・・上が何て言うか・・・」
「そりゃぁ、出世して~ヤツは、な・・・」
「僕だって出世したいですよ~。」
「ま、頑張れ、や。」田上の背中を叩いた。かなり強烈だ。
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