第23話:ギルド

 矢作らはクラブ・ギルドに来ていた。


 まだ開店前の準備中だ。

矢作らが入って行くと、

「まだ準備中ですよ。」

 と店の奥から声がした。


「警察のモノです。」

 田上が手帳を提示しながら言った。

「ああ・・」肩をすくめ、観念したように、「ロックさんの事・・

・」

 奥から出てきて応えた。黒ぶちメガネをかけたインテリ風の若い黒服だ。

 メガネで隠しているが、イケメンだ。

「ご存じですか・・・」田上。

「ご存じも何も・・・

首を斬られたって話でしょ。

ネットじゃ大騒ぎですから・・

・」

 まぁ、そうだろうなと矢作。


「ええ、その事で、2、3、質問があるんですが・・・」田上。

「そんなに詳しくないですよ・・・」黒服は応えた。

名前は、有宮ユウトと言った。大学を休学中だと言う。

「昨夜は、町田ユウさんが一人だったと・・・」田上。

「ええ・・そうです。いつもはシオンさんたちと来るンですが・・・」

「なるほど・・・ずっと居たンですか。」矢作。

「そうですね・・・まぁ、見張ってた訳じゃないので・・・絶対とは言えませんが・・・」

「支払いは?」

「え、ああ・・・、シオンさんのツケですね。ユウさんとロックさんは、いつもシオンさんの奢りですから・・・」

「シオンさんの・・ねぇ・・・」矢作。

「一人で飲んでた訳じゃないでしょ。」

「ええ・・、女の子たちと・・・」

「その女の子たちの連絡先とかわかりますか。」

「わかりませんよ。そんなの聞いたら、職務規定に引っ掛かって、違約金払わされますから・・・・」

「っで、オズの事について聞きたいンだが・・・」

「オズってバンドの・・・」

「ああ、シオンさんの・・・、前はドラムがいたって話だけど・・・」

「え、いや、知りません・・・」有宮は明らかに動揺していた。

「あなたから聞いたとは口外しませんから・・・」

「そんな・・・ボクが密告(チク)ったって、わかったら・・・・」

「どうせ、ググれば、わかる事でしょ。」

「まぁ・・・ボクだってマジで詳しくは知らないんですよ・・・」

「構わないですよ。知ってる事だけで・・・」

「そうですか・・・」有宮は考えた挙げ句、「昔、何か、事件があったらしくって・・・それが原因でドラムが辞めたとか、聞きましたけど・・・」

「事件って・・・」

「女の子絡みの・・・」

「暴行事件・・・」

「ええ、まぁ・・・、それで

その女の子が・・・」

「何だ。手首でも切ったか。」


「いや、マジでよくは知らないんですよ。」

 矢作は、う~んと唸った。


「わかりました。」田上。

「どうします・・・」


「ああ・・・そう、ロックさんの腕に赤い蜘蛛のタトゥがあったよね。」

「え・・、ええ・・・」

「レッド・スパイダーだろ。

一時期、流行(はや)った。」

「さぁ・・よく知らないですけど・・・」

「じゃ、また何か気付いた事がありましたら、連絡して下さい。」

「はぁ・・・」

矢作らは駐車場に戻り、

「じゃぁ、ググってみますか・・・」田上。

「グーでもパーでもどっちでもいいよ。」矢作。

「うっわ~、オヤジギャグ~。つまンね~。」田上は大袈裟に、

「っるっせーな。」

田上はスマホを出し、

「バンド オズ」とググった。だが、これまでの情報以上のモノはなかった。スクロールし、オズ ドラムを検索。

ドラムの名前は、石塚セイヤとあった。

「石塚セイヤか・・・・」

矢作は小さく呟いた。






























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