第17話:ワルキューレの騎行

 かすかにワルキューレの騎行が流れていた。


 暗い倉庫のようだ。

ロックは小さく呻き意識を取り戻した。

床に放り出されていた。


 身体はガムテープでグルグル巻きだ。

 全く自由が利かない。


 わずかに身体を動かすだけで、

悲鳴を上げそうなくらい激痛が走る。


「ここは・・・」目を凝らせた。

「フフフ・・・」機械で声を加工してあった。


「言ったでしょう。もうお忘れですか。」

「何・・・」

 声の方を見ようとしたが、影に

なってよく姿が見えない。


「ここは・・地獄だと・・・」


「な・・あんたは・・・シオンの兄貴なのか・・・」


「フフ・・・私の名前はオズですよ。」


「オズだか、何だか知らないが・

・・

あの事件はオレたちの責任じゃないンだ。」


「では、誰の仕業なんです。」


「シオンだ。シオンが全部仕込んだンだよ。」


「シオンが何故・・・」


「シオンは高村 雅(みやび)の事が

好きだったんだ。

だけど、告白(こく)ったのに、

あっさり振られちまって・・

その腹いせに、雅(みやび)を

拉致して・・・」


「暴行を働いた・・・?」


「そうだ。オレたちは、ただ金で

雇われたンだ。

それだけだったのに・・・」

「・・・・」無言で聴いていた。

「あの後・・・

まさか、彼女が自殺するなんて・

・・・

オレだって、悪いと思ってンだ。

頼む、許してくれ。

何でもする・・・」

 ワルキューレの音楽が徐々に

大きくなっていった。


 ガラガラガラッと重いものを

引きずる音が響いた。

「な、何をするんだ・・・?」

 ロックは怖くなりオズが何を

やるのか確かめた。


 オズを名乗る男は大きな重た

そうな斧を引きずってきた。


「冗談だろ・・・。

なぁ、オレじゃない。オレは金を

貰って・・拉致を手伝っただけで

・・・それに自殺なんかするとは

思わなかったンだ。

 頼むよ。シオンだ。オレたちは

シオンに唆(そそのか)されたンだ。

いけないのは、全部シオンなんだ~ーー❗」


 ズルズルと床を引きずる

耳障りな音が倉庫に響く。


「お願いだ。謝る。何度でも謝るから、

許してくれ~。殺さないでくれよ~ーー!」


「フ、振られた腹いせか・・・」


「そうだ。シオンだ。全部、

あいつのセイなんだ~ーー」


「下(くだ)らね~・・・」

 斧を頭上高く持ち上げた。


「うっわ~、やめてくれ~ーー」

「悪(あ)しき魂に報(むくい)いを・・・」

 一気に振り下ろした。


 絶叫と共に鮮血が飛び散った。












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