第16話:バンドメンバー・ロック

 ビジュアル系バンド・OZ(オズ)のメンバーは現在、リーダーのシオンとロックこと岩田ユウキ、それと町村優の3人だ。


 岩田はシオンたちからロックと言われていた。


 町村がユウなので、ユウキでは紛らわしいからだ。


 ロックも町田ユウも腕にはタトゥが彫られてあった。


 特に、ロックは両腕に彫られてあり、中には赤い蜘蛛のデザイン、通称、レッド・スパイダーの彫り物もあった。


 リハーサルのため訪れていたスタジオでロックは嘲笑った。

「ハッハハ……ったく、シオンのヤツ、いつまでママのオッパイをしゃぶってンのか」


「ま、そのおかげでオレたちも、ろくに仕事もしね~で遊んでいられるンだけどな」

 町田ユウも苦笑いを浮かべた。

「フ、あぁ~あ、シオンも来ない事だし、帰るか」

 大きく伸びをした。

「ああ…… けど連絡もつかないなんてヤバくないか。シオン」


「知るか。どっかの女とラブホにでも居るんだろ」


「フ、ラブホのカラオケでリハか」


「ま、龍崎家のお坊っちゃまだからな。

 あれでも……じゃッ」

 スタジオを後にした。


 ロックは帰宅途中、シオンに連絡をつけようとしたが一向につながらない。


 駐車場に置いた車に乗り込もうとすると、そのスマホに着信があった。


 非通知だったが、通話ボタンを押すと嫌に甲高い声が響いた。


《もしもし……、ロックさんですね》

 機械で声を加工してあるようだ。


「はぁ……、誰?」

《オズと申します》


「あン…、オズだってェ……?

 ふざけてンのか。オズは……」


《あなた方のバンド名ですね。

 そんな事は承知してますよ……》

「フン、イタズラなら切るぞ」


《待って下さい。シオンさんがいらっしゃらなくなったンですね》


「え……❓ ま、そうだが……」


《シオンさんなら、今こちらにいますが》

「え、こちらって……❓❓」


《地獄ですよ! もちろん》

「は~、何を言ってンだ」

《悪しき魂には、むくいを❗❗》

「な…、お前、龍崎の……」

 背後に人の気配がした。


 ハッとして振り向くと仮面を被った男が立っていた。


 手には警棒のようなスタンガンを持っていた。

「お前は❗❗❗」

 思わずロックは逃げようとしたが仮面の男は警棒を振り下ろした。


 ロックは避けようとしたが、わずかに遅く首に当たった瞬間、バチバチッと火花が散った。


「ぐっぎゃァ~ー❗❗❗❗」

 悲鳴にもならない声をあげ、そのまま失神した。


 そして闇の世界の住人となった。

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