第七話 猿が消えた。

 猿が消えた。


 それは少しだけ話題になったものの、すぐに忘れ去られた。

 大半の者にとっては、それは別にどうでもよいことだったからだ。

 他に面白そうなものは沢山あったから、彼らの興味はすぐにそちらに移っていった。


 ただ、中に一人だけ、そうではない者がいた。


 猿の文章を最初に「素朴で素敵な文章ですね」と評価した人物である。

 彼女は以前から、次第に迷走する猿の文章に心を痛めており、酷評で心を折られたと思われる猿のことを可愛そうだと思っていた。そして、猿の文章が読めなくなったことを寂しく思っていた。

 そこで、彼女はそのことを素直に文章にした。


「あなたの文章を楽しみにしている者が、ひとりいます。それを忘れないで下さい」

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