蝸牛(カタツムリ)の歩
カレンダーを捲ったところで梅雨は明けず、今日も雨の一日だ。
校門を出てすぐの手押しボタン式の小さな横断歩道は、帰宅時間には忙しない車の往来でその向こうの景色は塞がれる。脇のボタンを押せば数秒後にはこの道を渡って行けるのに、僕はそれをせずに立ち尽くしていた。濡れて重くなる足元に目をやると、蝸牛がゆっくりと横断歩道を渡り始めていた。ああ、それ以上行くと向こうへ着く前に車に轢かれてしまう。そんな僕の心配を他所に蝸牛は向こう岸を目指し進む。それは迷いの無い確実な歩みだった。
僕はボタンを押した。数秒後には向こう岸へと続く、黒と白の橋が現れるだろう。
気づけば西の空は僅かに雲が裂けて、幾筋かの光が射していた。
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