傘に降る
僕は先ほどこの目で見た光景にまだうっとりとしていた。真っ暗な部屋の中、照らし出された椎茸から胞子が降り注ぐ様はなんとも幻想的だった。
「もっとそっち寄ってよ!」
観察に付き合って帰宅時間が遅くなった挙句に雨に降られた彼女が、不満の声を上げて僕を傘の外へと押す。溜め息を隠すように上を向いた僕は思わず呟いた。
「星が降ってくるみたいだ。」
ビニール傘を伝う雨粒が街灯に照らされ光り、まるで流れ星のようだった。
「え?胞子?」
彼女が怪訝な顔で聞き返したとき、ふいにその髪が香り聞き違いを訂正できなかった。
傘の中に篭る彼女の匂いがビニールのカサから胞子のように降り注ぎ、じっとりと僕の肌に纏わりついてくるのを感じて。
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