1999年6月30日 『報告』

 今朝7時前に帰り着き

そのまますぐ床に入り、

今、午後2時。

およそ7時間の熟睡。

疲れは無い。

お気に入りの珈琲を煎れ

今日の朝刊に目を通す。

気になるニュースも事件もない。

至って平和な記事が羅列されている。

私がここ最近体験していることも、

もしかしたら日常茶飯事なのかもしれない、

知られていないだけで・・・

あれだけ不思議な体験をしてしまうと、

そう思えて来る。

そう思って世の中を見渡すと、

みんなが何かしらの秘密を

持っていると思えてならない。

もちろん、

大なり小なりあるであろうが・・・

シオン君程の奇跡的な秘密は無いであろう。

花音君にシオン君・・・

重なる『音』・・・

これは偶然なのだろうか・・・

それとも、

シオン君が主人格の花音君に

感化されているからだろうか・・・

興味は尽きない。

あれだけの出来事すら

花音君の記憶に無いというのが

多重人格の壮絶さを物語る。

本人の言い得ぬ不安と苦痛が

不憫でならない。

早速、報告せねば・・・


「電話・・・電話・・・と・・・

 おっ・・・あった・・・」


掛けてみると通話中だったため

暫くして掛け直すと、

花音君が出た。


「もしもし」


心なしか声が明るい。


「もしもし

 今大丈夫かな?」


私が聞くと


「もちろん、大丈夫ですよ」


「早速、昨日の報告をしたいのですが」


「えぇ是非

 では、今夜7時に家にご招待します。

 会わせたい人もいるので・・・

 ご都合は?」


「全然構いませんよ。

 場所はどちらですか」


「メールで場所と住所お送りします。

 わからなかったら、

 面倒掛けますがお電話いただけますか?

 あっそれと、不都合が無ければ、

 夕食もご一緒しませんか?」


「わかりました。

 では、ご好意に甘えて、

 夕食も是非ご馳走になります。

 では、今夜7時に・・・」


電話を切って外を見た時、

散歩をしてないことに気付いた。

まだ時間はあったため、

今日は公園とは別方向へと

散歩に出かけた。

途中、買い物をして

小一時間程で帰ってきた。

買い物袋の中身を所定の場所に仕舞い、

軽くシャワーを浴びて汗を流した。

約束の時間まで、まだ少々あったため

忘れる前に、報告の内容を手帳にまとめた。

時計を見るとそろそろ出る時間だ。

ぼちぼち外出の支度に取りかかり

慌てることなく家を出た。

続きは、明日の日記に書くとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る