昼寝。
「あっつ・・・誰だ土いじりとか言い始めた奴・・・」
男は汗だくになりながら、鍬を杖代わりにして項垂れている。
愚痴っているが原因は自分の発言である。
男の視線の先には一心不乱に鍬を振るい、畑を耕していく少女の姿が有った。
汗を飛ばし、一切疲れた様子を見せる事のない少女に男は若干尊敬の念すら覚える。
例え体力のある種族とはいえ、疲れないわけでは無い。
ひとえに少女の集中力のなせる技だなと。
とはいえ、少女は集中すると周りが見えないので一長一短である。
「種族、か」
少女を見て、ひとりごちる男。以前聞かれて素直に応えなかった少女の種。
今はまだ言わなくていいと、言わない方が良いと思った事。
少女が売れ残っていた理由は、そこに帰結する。
少女自身が原因ではないのだが、少女が奴隷になった経緯を知れば、買わない人間が普通だ。
だが、少女はそんな事に関係なく良い子だ。だからこそ、今を楽しんでほしい。
「とはいえ、いつかは言わないとな」
男は呟きながらよろよろと日陰により、腰を下ろす。
日陰の冷たさと良い感じに吹いて来た風を受け、幾分か体の熱を落とす。
そのまま元気に動く少女を眺めつつ、思考を手放し始める。
男は疲れているせいで、何だか色々考えるのが面倒になり始めていた。
「まあ、うちで雇えばいいか」
少女の未来は少女が決断する事だが、その結果行く所がなければ自分が面倒を見ればいい。
そう結論付け、完全に思考を放棄して休憩する男。
その姿は完全に疲れた中年親父であった。
男はいつの間にか寝ていたらしく、何かに撫でられている感覚を覚えながら目を覚ます。
男が頭を撫でている人物を見ると、少女が笑顔で撫でていた。
のみならず、少女の足は男の枕になっている。俗にいう膝枕だ。
「あー、ごめん、寝てたか」
男は少女に謝るが、首をフルフルと横に振る少女。その顔はとても優し気で、嬉し気だ。
男が起きたのに、頭を撫でるのを止める様子もない。
むしろ、一層嬉しそうな笑顔を見せながら撫でている。
「あー、えっと、楽しい?」
少女は男に聞かれ、コクコクと頷く。
男としては、年端も行かない少女に膝枕をされ、頭を撫でられている現状は少し恥ずかしい。
恥ずかしいが、少女が楽しいならいいかとなすがままにされる。
若干寝たりないと思ったのも有るのだろう。
男はしばらく少女に身を任せ、心地のいい睡魔に呑まれた。
それを見ていた女に、後で恨めしそうに文句を言われたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます