ゲーム。
ピコピコと、古めかしい音が少女の部屋に響く。
少女はコントローラーを握り、真剣な表情でモニターを見つめている。
モニターに映る映像もまた古めかしいドットで、少ない色数を駆使された物が動いている。
かなり古いタイプのコンピューターゲームだ。
少女は以前から、男がモニターにつないで遊んでいた物が気になっていた。
少女にその物体が何かと聞かれた男は、最近やっていなかったゲームを少女に渡した。
とりあえず遊んでみなよと。
勿論あまりやりすぎないようにと、女に釘を刺されたりなどもしたが。
少女は何となく始めて、良く解らないが楽しんでいるのが現状である。
ボタンを押すと映像が動くのが楽しい。その程度の認識で遊んでいた。
それもしばらくすると要領を得たようで、少女はゲームのクリアを目指し始める。
だが、何となく遊んでいた先ほどと違い、クリアを目指そうとすると中々難しいもの。
往々にしてレトロゲームとは難しい物だが、少女がやっているゲームは比較的簡単な物だ。
だが、普段そんな物に触れていない少女には強敵だった。
「おいそろそろ――――」
女は部屋から出て来ない少女にそろそろゲームを止める注意に来て、言葉が出なかった。
部屋に入ってすぐに見えたのが、ゲームオーバーの画面と、コントローラーを握りながら目が死んだ少女だったからだ。
こちらを見つめる少女を見て、女は悩む。
あまり部屋から出ないのは良くないが、このまま外に出すのも忍びないと。
「はぁ、仕方ないな」
女はため息を吐きながら少女の横に座る。このゲームは女も昔やった事が有った。
男と一緒にどちらが早くクリアできるかなどと言う遊びをした覚えもある。
なので女は少女にアドバイスを出して、クリアさせてやろうと思い至った。
「このゲームは昔やった。とりあえずやってみろ、行けなさそうな所はやり方を教えてやる」
少女は女の言葉にコクコク頷き、ゲームを再度始める。
女が居ればどうにかなるはずだという、謎の期待を寄せて。
「何やってんだお前」
「はっ!」
男は呆れながら女に声をかけ、女はその声で正気に戻る。
男は女の姿を誰も見かけていないと聞き、おそらくここだろうと様子を見に来た。
その予想は大当たりであり、女は完全に少女との遊びに夢中になっていた。
その手には2Pコントローラーが握られている。
既に先程少女が苦戦していたゲームはクリアしており、別の協力型ゲームをプレイしていた。
「旦那様、なぜもっと早く探しに来ないのですか」
「おまえ、舐めんなよ」
こんな時でも態度を崩さない女と、そんな女に頭を抱える男。
その光景を見て、少女は立ち上がって男の前で頭を下げる。
女は自分と遊んでくれていただけだと。悪いのは自分だと。
「はぁ・・・まあ、いいよ。とりあえず、探してるやつ居たから言ってからにしてやれよ」
「はい、解りました」
男は少女の頭を撫でつつため息を吐く。
女は基本的には自分の仕事はやった上で、少女の面倒を見ている様な物だ。
元々面倒を投げた身として、そこまで強く言うつもりも無かった。
「とりあえず、飯の時間だぞ」
「もうそんな時間でしたか」
「お前、ちょと熱中しすぎだろ」
「貴方も普段は人の事言えないじゃないですか」
男と女はいつもの様に言い合いながら食堂に向かい、少女もその後ろをトコトコとついて行く。
ただ少女の頭の中は、もうちょっと上手になったら男と一緒に遊べるかな、という思考で埋まっていた。
その夜、少女が朝までゲームをやった事により、夜には男の部屋に本体を返しに来るというルールが出来た。
流石の女も少女を叱ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます