第23話 乙女

どんなことがあっても熟睡できる自分がこわい、と思う。

熟睡できたんだから昨日のことを忘れてる、なんてことは全くなく、妙に色濃く覚えているのだ。

布団の中で思い出すとぶわっと頬が熱くなる。

けれど、身体は軽く、熱も下がっているようなので学校には行かなきゃならない。これ以上休んで兄を心配させるわけにもいかないからね。


先輩に会ったらどんな顔をすればいいのだろう。

というか、昨日…一応告白されて、俺も告白したから…あれ?もしかしなくても付き合う、ということになったのだろうか…待て待て待て待てそうなの?

なんか深くは考えてなかったけど、勢いでそういうことになったのかもしれない。

嬉しいし、幸せなのだけど、恥ずかしい…単純に。


いや待て、昨日どんだけ俺は恥ずかしい行動をとったんだ?登校中恥ずかしさに何度も頭を抱えていた。


でも…お見舞いに来てくれて、心配してくれて…本当に嬉しかったんだ。こんなステキな人に会えて良かったな、って思ったんだよ。


「なーににやけてんだよ」

「うわ!!!び…っくりしたー…」


下駄箱のところで後ろから声をかけられた。朝からテンションはそんなに高くない親友の太一。にやけ顔を指摘されて余計に恥ずかしい。俺そんなにやけてたのかな。


「思い出し笑いとか、やっぱ恭弥はムッツリだよな」

「そ、んなことないから!」


恥ずかしさを隠すように俺は教室へと足早に階段を駆け上った。




授業中もぼんやりと考えるのは先輩のことだった。いや、もちろん授業も聞いてるよ?でもなんとなく持田先輩のことが…先輩の昨日の言葉がよぎって…


俺かなり乙女思考になってね?やばい…また熱上がりそう…



そんなこんなであっという間に昼休みになった。

俺結局午前中ほとんど先輩のことしか考えてないんだけど…どっかの少女漫画でみたよ、この展開。



「恭弥ちゃん、こにゃにゃちわ〜〜」

「うわ!!ひ、日比谷先輩!!」

「うん、いいリアクションだね、きょーやちゃん♡ランチいこ♡」



いつから居たんだ、気配が全くなかったんだけど。突如俺の目前に現れたのは日比谷千夏先輩だった。目の前にイケメンってやっぱすごい迫力だしドギマギするな…彼はいつも通り俺を屋上へと誘ったのだった。

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