第22話 報告
side:持田
油断するとにやけそうになる顔を必死でおさえる。
予想していなかった展開に自分でも舞い上がっているみたいだ。
かなり癪だしからかわれそうだが数少ない友人のあいつに報告くらいはしようか。
一応、あいつには世話になったし、恭弥と再会できたのもあいつのおかげではあるからな。
海斗さんの店で待ち合わせすると、あいつはいつものへらへらした顔で俺をからかってきたが、あいにく今の俺は自分でも思った以上に機嫌がいいらしい。いつもの戯言もなんだか許せる気がした。
というか、こちらから言ってもいないのに恭弥のこと言い出すなんて。
まあ俺がこいつを呼び出すってことは、最近じゃ恭弥関連のことしかないのだが。
「恭弥に告られた」
そう言うと、千夏と海斗さんまでもがかなりの間抜け面になった。
そして、それからの絶叫。
おい、そこまで驚くことはねえだろ。
「なになになにそれ!まさか脅したとかじゃないよね?ね?」
「おい!そういう直接的なことはいうな!あ、まさか力づくで、ってことはねえよな、崇」
「うっわそれやばいじゃん。てか恭弥ちゃんが病に伏しているのをいいことに無理やりって・・・崇見損なったよ!」
「うーわ崇最低じゃん・・・あ~あ~そこまでしなくても」
「てめぇら・・・死ぬ覚悟はできてんだろうな」
こいつらに報告しようと思った俺が馬鹿だった。なぜおれが恭弥を無理やり襲って告白させたみたいなことになってんだ。どうして俺の周りにはこういうろくなやつがいないんだろうか。
かなり不快な勘違いで拳に思わず力が入る。
「あーあーごめんって!崇目がマジだから!これはさ、ちょっとしたジョークじゃん?も~冗談が通じないんだから」
「死ね」
「あ~あ~話が進まないって!崇、すまなかったな!俺も思ったこと言っちゃうたちだから許してくれ」
「海斗さん・・・それ崇を煽るだけだよ」
真面目な顔で弁明する海斗さんはやや的外れなことを言っていたが、この人はこういう人だと思うと、俺の怒りの熱も少しおさまってきた。恭弥に癒されたことを思い出して必死に怒りを鎮める。
「崇ごめんね~?で?」
いつもの調子に戻った千夏は俺に先を促した。
「本当は今日告白するつもりはなかったんだが…その、勢いで告白して…そしたら恭弥も告白してくれたんだよ…」
「ふ~ん、そうなんだ~!よかったじゃん~!」
「…あっさりしてんな…」
「だってそこは二人の秘密でしょ?崇が超絶自慢したいってんなら聞いてやらないこともないけどね~もしかして崇、自慢しちゃいたい系~?さすが恋人ができると余裕綽綽~」
もっと深く突っ込んでくるかと思いきや、千夏はそう茶化しながらそう言った。
「…いや、恭弥がかわいかったからあんまり言いたくねえな」
「さっそく惚気いただきました~ちなつお腹いっぱいなんですけど~」
千夏は楽しそうに目を細めて俺の方に視線を移した。
「よかったね、崇」
「…おう。いろいろ、その、ありがとうな」
「どういたまして~」
海斗さん、お酒ちょーだい!と馬鹿丸出しのことを言って怒られていた。
こいつとつるんでてよかったな、と素直に思った。
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